奈良県生駒市の小紫市長が、2020年5月20日に『市民と行政がタッグを組む!生駒市発!「自治体3.0」のまちづくり』を出版しました。
今回のテーマは、「自治体3.0」のまちづくりです。
市民と行政がともに共創する「自治体3.0」の必要性や背景、実現するために取り組むべきこと、実際の生駒市の取り組み事例などが、具体的にわかりやすく紹介されています。
地方公務員だけでなく、多くの首長や議員、また、住民に読んでほしい1冊です。
では、本書ではどのようなことが書かれているのでしょうか?
今回は、『市民と行政がタッグを組む!生駒市発!「自治体3.0」のまちづくり』の感想について、ご紹介します。
本書の概要と感想!
『市民と行政がタッグを組む!生駒市発!「自治体3.0」のまちづくり』(著者:小紫 雅史 氏)
2020年5月20日発売
小紫 雅史(こむらさき まさし)
奈良県生駒市長。1997年、一橋大学法学部を卒業し、環境庁(現・環境省)に入庁。ハイブリッド自動車の税制優遇、(株)ローソン等との環境自主協定の締結などに携わる。米国のシラキュース大学マックスウェル行政大学院に留学し、2003年に行政経営学修士号(MPA)、教養学修士号(MA)を取得。帰国後、「NPO法人プロジェクトK」「環境省を変える若手職員の会」を立ち上げ、官邸に霞が関改革の提言を提出するなど、公務員制度改革に一石を投じる。2007年2月から3年間ワシントンDCの日本国大使館に勤務。2011年8月、全国公募による371名の候補者の中から生駒市副市長に就任。2015年4月、生駒市長に就任し、現在に至る(現在2期目)。生駒市では、環境モデル都市、SDGs未来都市への認定、採用制度改革や地域に飛び出す副業制度の実施、自治体電力会社の設立、先進的な受動喫煙防止施策の推進等、数々の実績を上げる一方、市民と行政がともに汗をかいて進める「自治体3.0」のまちづくりを提唱し、全国に先駆けて実践しており、各種メディアへの出演・連載や講演も多数。1974年兵庫県小野市生まれ。
本書に書いていること!
まずは目次を確認してみましょう。
本書を読み進めるにあたり、まずは「自治体1.0」、「自治体2.0」そして「自治体3.0」の違いを知っておきましょう。
簡潔に比較すると、以下のようになります。
- 自治体1.0:お役所仕事、今のままでも何とかなる、最後は国や県がなんとかする
- 自治体2.0:首長の強いリーダーシップ、市民はお客様、スピード感とコスト意識
- 自治体3.0:みんなの課題はみんなで解決、市民力、共創、地域への愛と行動
まずは、「自分の自治体はどれに該当するか?」を確認してみましょう。
自分の自治体の立ち位置をしっかり認識し、何が課題となっていて、どのように行動すれば良いのかを、本書を通じて気付くことができるでしょう。
現在、ほとんどの自治体がまだ「自治体1.0」にあると言われています。
一つでも多くの自治体が「自治体3.0」になれば、日本各地が活気で満ち溢れるのではないかと感じました。
一人でも多くの人に本書をご一読いただいて、日本中の地域が元気溢れるきっかけになれば良いなと思います。
私が本書で特におススメしたい3つの内容とは?
本書はとても読み応えのある内容ばかりでしたが、今回は、私が特におススメしたい3つの内容について、ご紹介します。
生駒市の事例が惜しみなく紹介されている!
本書の第2章では、生駒市の事例が9つ紹介されています。
第2章の目次一覧は、下記の通りです。
- 高齢化をネガティブワードにしない!生駒市の介護予防の取組
- 商店街の店主の想いが街を変える!「生駒駅前100円商店街」
- 主婦の癒しの場が女性のスキルを街につなぐ場へ!「いこママまるしぇ」
- プラレールをみんなでつなぐと街のいろいろな課題が解決した!
- 赤ちゃん連れでコンサートを楽しめる街!「市民みんなで創る音楽祭」
- 男だって負けてない!地元での飲み会から広がるまちづくり「いこま男会」
- 退職者が知見を活かして活躍できる街を創る「市民エネルギー生駒」
- 生駒の女性たちが一から作り上げた交流型プログラム「いこまとりっぷ」
- ワークショップから生まれた夜の図書館イベント「本棚のWA」
私が特に素晴らしいと感じているものは、「いこまとりっぷ」の企画をした「いこまち宣伝部」です。
「いこまち宣伝部」は、市民による街のPRチームです。
チームに参加している市民がお気に入りの店や人、場所を取材し、記事をまとめて積極的に発信する取り組みです。
情報発信は、自治体が行うよりも市民が自ら発信する方が、「説得力」が強いです。
私も日々チェックしていますが、とても生駒市が好きになる発信ばかりでワクワクしています。
その「いこまち宣伝部」の企画・案内で、「いこまとりっぷ」が開催されています。
「いこまとりっぷ」は、人に焦点を当てたプログラムであり、また、ツアーだけの特別な体験も用意されています。
観光だけの視点ではなく、生駒市が「好き」になる仕組みです。
「いこまち宣伝部」と「いこまとりっぷ」、皆さんも是非ご覧ください。
まちづくりの市民力!
本書の第3章では、「まちづくりの市民力」についてのお話があります。
そこで「自治体3.0」のまちづくりにおける「市民力」とは、以下のように定義されています。
市民力=地域への愛・誇り+行動
ここで大切なことは、「地域への愛や誇りを高めるだけではいけない」ことです。
愛や誇りという「想い」だけではなく実際に「行動」を伴ってこそ、まちづくりに繋がります。
地域への愛や誇りは、市民が「地域を知る」ことから始まります。
市民は、意外と地域のことを全然知りません。
自治体は、地域のことを「知る」の手助けを行いながら「行動」のきっかけを与えることが大切だと言えるでしょう。
生駒市では、先ほどご紹介した「いこまち宣伝部」が、まさに行動のきっかけとなる仕組みの一つです。
また、生駒市が上手だなと思うところは、市民のまちづくり活動や成功事例をしっかりと発信して共有していることです。
市民の取り組みを発信することで、実際に行動している市民のやりがいやモチベーションに繋がるだけではなく、「どうやって動けばいいか?」と悩んでいる市民の助けにもなります。
他にも、まちづくりの「市民力」を高めるためのノウハウが本書には詰まっています。
具体的な動き方の提案なども紹介されていますので、是非じっくり読んでみてください。
職員の「協創力」!
本書では、職員の「協創力」として、以下の3つが紹介されています。
- 協創できる市民を見つける高いアンテナと会いに行く行動力
- 協創の事業を創るコミュニケーション力と企画力
- 市民との協創を行政組織内で説得する力
私にとっては、いずれも共感しかありません。
これからの時代は、本当に上記の3つが大切な力となってきます。
また、「自治体職員は、地域のプロデューサーであれ」という見出しの本文には、「面白い市民とまず100人仲良くなりましょう」とも書かれています。
「まず地方公務員として何をすれば良いか?」と考えている人は、是非実践してみてください。
更に、生駒市は「人材」に対してもとても力を入れています。
地域に飛び出す公務員を育成・支援するための制度や副業解禁、採用強化などです。
ここでは紹介しきれませんので、是非本書の第3章をご覧ください。
併せて、職員採用ムービー「#生駒は違う」も素敵な動画なので、是非一度ご覧ください。
まとめ
今回は、『市民と行政がタッグを組む!生駒市発!「自治体3.0」のまちづくり』の感想について、ご紹介しました。
素直な感想としては、「行政だけでいくら頑張ってもダメなんだ!」ということを考えさせてくれる1冊でした。
どのようにして「市民力」を高めていけるか、一人の地方公務員としてどのように動けば良いかなどのマインドを学ばせていただきました。
富田林市で言えば、「自治体3.0」の概念は「富田林テレビ」が当てはまると感じました。
「富田林テレビ」は市民をゲストに招き、市民と共に「市民参加型の情報発信番組」です。
今後は、本書を参考に、「市民力」を高める一つの場に出来ればと思います。
冒頭でもお話しましたが、本書では、市民と行政がともに共創する「自治体3.0」の必要性や背景、実現するために取り組むべきこと、実際の生駒市の取り組み事例などが、具体的にわかりやすく紹介されています。
誰が読んでも、本当に多くの気付きと学びがあります。
私としては、地方公務員だけでなく、多くの首長や議員、また、住民に読んでほしい1冊です。
是非、皆さんも手にとって読んでみてください。
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