「この件、起案よろしく。」
「部長の決裁はとれた?」
私たち地方公務員に必要な基本的な事務処理能力として、「起案文書の作成」があります
「起案文書」を簡単に言えば、自治体の意思決定をしても良いか伺う文書です。
例えば、文房具を買うことやHPを更新することであっても、起案文書が必要になります。
それだけ「起案文書の作成」は、地方公務員にとって欠かせない事務処理です。
では、どのようにして起案文書を作れば良いでしょうか?
今回は、新人地方公務員必見!起案文書の作り方について、ご紹介します。
そもそも「起案文書」とは?
まずは、「起案文書」がどのようなものかを確認します。
自治体ではとにかく起案文書を作ることが多いので、起案文の書き方は1年目に覚えてしまいましょう。
起案文書の「基本」を知る!
まずは、起案文書の基本を知りましょう。
起案文書には、主に下記の意味があります。
- 組織の意思決定!
- 記録を残す!
起案文書は、上司に説明するために行うものではありません。
組織の意思決定を伺ったり、記録として残すために行うものです。
また、記録として残すことで、「対外的な証拠」にもなります。
そのため、事案の決定にかかる経過を客観的に説明するために残しているものです。
更に、起案内容はより重要性を増します。
起案文書には必要事項が明確で漏れのないように記載する必要があります。
「客観的に認められる証拠」とするためには、文体、用語などに配慮する必要もあります。
もしも事前に内部で了解を得ている事案であっても、起案文書の中に明記されていなければ、対外的には「決定権者が有効に意思決定したこと」にはなりません。
もしも有事の際には、大きな問題になる可能性もあります。
起案文書の「要素」を知る!
起案文書には、「何を決定するのか?」に加えて、理由や経過を明らかにする必要があります。
また、必要に応じて、理由や経過を明らかにする資料を添えます。
整理すると、起案文書に必要なものは以下のようになります。
- 文書属性
- 起案伺い文
- 起案本文
- 添付文書
- 関連文書
起案文書に必要なものは、原則としてこれだけです。
承認・決定権者が判断を行うのに、本当に必要な内容のみを記述します。
1から3までは、必ず記述しなければなりません。
これらの情報が欠けると、決裁者が判断を行うことができないからです。
4と5については、3で情報が足りない場合に、必要に応じて添付します。
文書属性
件名や起案日、文書分類、起案番号、決裁区分、回議ルートなど、文書の基礎情報として必要なものです。
起案伺い文
どのような処理や決定について判断を仰ぐのか記入します。
文章としては、「〜してもよろしいか。」などです。
できるだけ長い文章は避けで、簡潔に書きましょう。
起案文書の中でも、最も重要な部分です。
起案本文
起案本文は、決裁者が決定する際の基幹となる概要情報です。
起案本文は、起案文書が何を決定しているのかを、簡潔で具体的に記述する必要があります。
主な内容は、実施内容、理由、目的、対象、根拠法令、経過、方針、経費などです。
長くなる場合には、添付文書にて資料を作成して添付しましょう。
添付文書
決裁者が意思決定などを行うために必要な内容のうち、起案本文の内容を更に詳細に補足する資料等がある場合には、添付文書として添付します。
送付や試行を伴う文書がある場合は、添付するようにしましょう。
関連文書
決裁者が意思決定などをするに当たって、参考とする文書等がある場合に添付します。
例えば、前例となる起案文書を一緒に回す場合や収受からの一連の流れで起案処理を行う場合などです。
起案文書の具体例!
では、実際に具体例を2つ見てみましょう。
今回は、簡潔に「件名」と「起案伺い文」のみのご紹介とさせていただきます。
なお、具体例の内容も、公務員Youtuberはらしょ〜さんの事例を引用させてもらっています。
具体例その1〜HPの更新〜
新型コロナウイルスに係る特別定額給付金の申請書の発送日に関する内容をHPに掲載する起案文書を作成します。
まずは「件名」から確認しましょう。
件名は、以下の2つのパターンでどうにかなることが多いです。
- 「Aに係るBについて」
- 「Bについて(A)」
そのため、今回の事例の場合であると、下記のようになります。
- 「特別定額給付金に係るHPの更新について」
- 「HPの更新について(特別定額給付金)」
そして、具体的にどのようにHPを更新するのかを「起案伺い文」に書きます。
まずは、定型文を覚えましょう。
「見出しのこと(表記の件)について、別紙のとおり〇〇してよろしいか。」
今回の場合であれば、「見出しのことについて、別紙のとおりHPを更新してよろしいか」となります。
もちろん、別紙の添付文書には、更新後のHPのコピーをつけておきます。
そのHPを具体的にどのように更新するのか、また、いつ発送するのかを、起案伺い文の2行目と3行目に書きます。
- 「特別定額給付金の申請書の発送時期を掲載するものです。」
- 「発送時期:5月22日」
あとは決裁者の好みがありますので、とりあえず起案文書を回しましょう。
もしも上司に何か言われたら、直せば良いだけです。
具体例その2
もう一つ、具体例を見てみましょう。
新型コロナウイルスの影響で、5月末まで学童保育を閉鎖しなければいけない時の通知文を、保護者に送るための起案文書を作ります。
件名は、「学童保育の閉鎖について(通知)」としておきます。
伺い文は、「見出しのことについて、別紙のとおり文書を通知してよろしいか。」とします。
そして、2行目にどんな文書を通知しますか?
「5月末まで、学童保育を閉鎖する旨、保護者に通知するものです。」
そして、どこの小学校区の保護者に通知するのか、これも書いておいてあげましょう。
「対象校区:A小学校、B小学校」
これで大丈夫だと思います。
おそらく皆さん、起案をするたびに、上司に色々赤ペンで添削されると思います。
僕も未だに、色々添削されて戻ってきます。
色々やっていくうちに文書はうまくなるので、めげずにやっていきましょう。
まとめ
今回は、新人地方公務員必見!起案文書の作り方について、ご紹介しました。
起案文書のことを突き詰めれば、まだまだ細部にわたりお話したいことがあります。
例えば、公開情報や回議区分、決裁区分などのお話です。
しかし、今回は「新人地方公務員向け」なので、簡潔にさせていただきました。
ちなみに、決裁区分に悩む方は多いと思いますが、所属自治体の職務規定などに書かれているので、是非一度ご確認ください。