2020年11月19日に、足立区教育長の定野司さんが学陽書房から『合意を生み出す!公務員の調整術』を出版しました。
本書は、公務員に欠かせないスキル「調整術」のノウハウを学べる1冊です。
「調整」に対する基礎的な考え方や知識だけではなく、様々なケース別の調整方法も網羅されており、実践的な内容も多く書かれています。
私も日頃から調整業務を多くしているので多くの共感があったと共に、まだまだ知らないこともたくさんありました。
一人の地方公務員として成長させてもらえる1冊です。
では、本書にはどのようなことが書かれているのでしょうか?
今回は、『合意を生み出す!公務員の調整術』の感想について、ご紹介します。
本書の概要と感想!
『合意を生み出す!公務員の調整術』(著者:定野 司 氏)
2020年11月19日発売
定野 司(さだの つかさ)
足立区教育長。1979年埼玉大学理工学部環境化学工学科を卒業後、足立区に入区。財政課長時代の2002年度に導入した「包括予算制度」が経済財政諮問会議の視察を受け注目を浴びる。以来、一貫して予算制度改革やコスト分析による行政改革を実践。公務の傍ら、講義、講演活動を行う。環境部長時代の2008年から自治体の事業仕分けに参加。総務部長時代の2012年、多くの自治体と共同して新しい外部化の手法を検討する「日本公共サービス研究会」の発足、運営に携わるなど、自治体間の垣根を越えて持続可能な自治体運営に取り組む。2015年から現職。近著に『図解 よくわかる自治体予算のしくみ』(学用書房、2010年)、『みるみる仕事が片づく!公務員の時間術』(同2013年)、『一番やさしい自治体予算の本』(同2013年)、『自治体の財政担当になったら読む本』(同2015年)がある。
本書に書いていること!
まずは目次を確認してみましょう。
- 第1章:調整術とは何か
- 第2章:調整の原則
- 第3章:調整の基本テクニック
- 第4章:組織における内部調整
- 第5章:議会との調整
- 第6章:地域との調整
- 第7章:関係機関との調整
本書は、公務員の仕事では欠かせない「調整術」に関する考え方や技術が書かれた1冊です。
調整の基礎からケース別の調整術まで、全7章でしっかりと紹介されています。
わかりやすくコンパクトにまとまっているので、普段本を読まない人でもとても読みやすいです。
本書を机の片隅に置いておくことで、仕事が困った時の手助けとなるでしょう。
本書を読んだ私の感想!
本書を読んだ私の感想は、「公務員として働く上で、大切なことを知れた!」ことです。
一概に「調整」といっても、シュチュエーションによって方法が異なります。
私も調整業務がメインの仕事を抱えているのですが、とても参考になりました。
「どう調整したらいいんだろう?」と思っていた課題が、一つ解決しました。
これからの公務員の仕事は、デジタル化などで大きく変わっていくとも想定されています。
そのため、コミュニケーション、ヒアリング、調整、交渉、プレゼンテーション、ファシリテーションなどの「人間にしかできない」能力の高さが求められます。
この中で特に必要なものが「調整」というものです。
本書内で「調整」は、「ヒューマンスキル」と紹介されています。
つまり、公務員としてだけでなく、社会人として欠かせないスキルと言えるでしょう。
今回は「公務員」に特化した調整術の本ですが、根本的な考え方は民間企業等でも通じるものがあると思います。
社会に出ている皆さんに、一度読んでもらえたら嬉しいおススメの1冊です。
私が特に共感した3つの「調整」のお話!
本書では、多くの「調整術」が書かれていました。
相手の立場ごとのケーススタディ以外で、私が特に共感して実践している3つの調整術について、ご紹介します。
第2章ー1:一方ではなく、双方の満足を見出す「Win-Winの原則」
まずは「Win-Winの原則」です。
調整のパターンとして、Lose-Lose、Win-Loseに次ぐ第三のパターンとして「Win-Win」が紹介されています。
この考え方は、私も官民連携業務で実践している大切なものです。
単純な利害関係がWin-Loseと片方に有利が発生する場合でも、視野をより広く考えることで、お互いに満足する「Win-Win」の答えを探すことができます。
調整においては一方の満足ではなく、お互いがハッピーになることが目標です。
成功するときは、みんな笑顔になっていることが重要でしょう。
また、「Win-Win」が実現しない場合は、中断することも大切です。
本書では、この中断を「No Deal(=「取引しない」という意味)」と紹介されています。
上手くいっていない時は、一度距離を置いてからこそ見えてくる景色もあります。
将来的に「Win-Win」を実現できたらいいな、という切り替えも大切でしょう。
第3章ー1:初対面の不安は「準備」で解消できる
次に、初対面の場合における調整です。
初対面が苦手な人は多いと思いますが、大体のことは「準備」でなんとかなります。
本書において初対面が苦手な理由は、「何を話したらいいのかわからないから」と書かれています。
まず前提として、相手が初対面は苦手でないなら、相手に任せてしまいましょう。
問題は、相手も初対面が苦手な場合です。
その場合は、以下のように解決すれば良いと本書で紹介されています。
- 相手を知る
- 本題をシミュレーションしておく
- 相手との共通項を見つける
- 名刺を利用する
- 相手に興味を持つ
私も相手と初対面の場合は、名刺を見て10分喋ることを意識したり、相手との共通項を探しにいくようにしています。
何度か試してみるうちに、自分なりの初対面対処術が身に付くと思うので、少しずついろいろなことを試してみてください。
第3章ー4:調整相手の「顔」を立てる
最後は、調整相手の「顔」を立てることです。
私はここを一番大切にしています。
「この調整で、相手の立場や名誉に傷がつかないか?」を常に考えるようにしています。
本書においても、順番を守ることや「おかげさまで」を使うことなどのテクニックが書かれています。
特に「おかげさまで」は、私も頻繁に意識的に使っています。
「おかげさまで、先日の取り組みは上手くいきました!」
「〇〇さんのおかげで、本件はメディアに取り上げられました!」
自分がこれらの言葉を言われたとイメージしてみてください。
悪い気はしないと思います。
調整相手の「顔」を立てることは、「Win-Win」を意識していれば自然と出来るのではないかと私は考えています。
少しの意識でみんなが気持ちよくなることも多々あるので、本書の内容を実践するところから始めてみると良いでしょう。
まとめ
今回は、『合意を生み出す!公務員の調整術』の感想について、ご紹介しました。
本書を通じて、改めて公務員の仕事には「調整術」が大切だと気付きました。
「調整」という一言でも相手によって様々であり、その一つひとつを意識して取り組むだけでも、今の仕事がグッと楽になっていくものでしょう。
今回は割愛しましたが、以下のケース別調整術は、とても実践的でした。
多くの人に読んでもらいたい部分でもあります。
- 組織内における内部調整
- 議会との調整
- 地域との調整
- 関係機関との調整
あなたが想像している以上に実践的で、仕事に活かせることが書かれているはずです。
まずは皆さんも、騙されたと思って手に取ってみてください。