私は令和元年10月から令和3年3月まで、公民連携の実務担当として、50社以上とのお付き合いと15社との協定締結に関わってきました。
その中で、他の自治体から「どのような実務をしているのか?」というお問い合わせを多くいただきました。
「民間企業とどのようにして繋がるの?」
「庁内調整のポイントは?」
「協定式の準備はどうすれば?」
特に、このような実務的な質問を多くいただきました。
公民連携の実務は、細かい事務や調整がとても多い仕事です。
しかし、丁寧に一つずつ確実にクリアすることが出来るものでもあります。
では、どのようなものでしょうか?
今回は、公民連携実務担当者必見!1年半で15の協定締結をした私が行った公民連携の実務について、ご紹介します。
なお、本記事は、公民連携のノウハウや考え方に関する記事ではなく、具体的な実務の進め方を共有するものです。
マインドセットに関する記事は、以下をご参照ください。
富田林市公民連携デスクとは?
まずは、富田林市公民連携デスクがどのような組織なのかを確認しましょう。
富田林市公民連携デスクの概要!
富田林市公民連携デスクは、令和元年10月に設置されました。
公民連携デスクは、企業・団体さんからの相談や提案を一元的に受け付けるワンストップ窓口(コーディネーター)の役割を持つので、そこでは日々、企業等の方々と庁内各部局を繋ぐ「対話」が繰り返されます。
公民連携デスクができてから、庁内各部局とのマッチングに向けた調整に注力することはもちろんですが、まずは「公民連携」に対する庁内浸透と理解が必要だと思い、公民連携事例の情報共有や、各部局の課題と企業の提案、双方向からの情報集約と繋ぐ機能を持つワンストップ窓口を目指しています。
立ち上げから人事異動までの1年半で残した私の実績!
次に、私が富田林市公民連携デスク在籍の1年半で残した実績です。
ほとんど毎日のように、どこかの民間企業と対話や連絡を取り続けた結果です。
当時の上司と一緒に、様々な調整や締結に繋げることができました。
- 10社との包括連携協定締結
- 5社との個別事業連携協定締結
- 50社以上とのネットワーク確立
私のミッションは、いかに多くの民間企業とコミュニケーションをとり、各部署で持つ課題の解決に繋げることが出来るのか、ということでした。
そのため、多くの民間企業、そして、庁内各部署とのコミュニケーションを欠かさず行なっていたので、その結果だと思います。
その中でも、私が一押しの事業は、一般社団法人FC大阪スポーツクラブと取り組んでいる市民参加型インターネット番組「富田林テレビ」です。
毎月最終水曜日に生放送しており、総数400名以上の方々に出演していただき、「市民と市民のハブ機能」も備わっています。
自然と市民同士の繋がりが生まれる場になっていることが、とても嬉しいです。
納流!公民連携実務マニュアル!
では、私が富田林市公民連携デスクで実践してきた実務のノウハウを共有します。
自治体によりステップは異なると思いますが、大筋は同じだと思いますので、ご参考になれば幸いです。
公民連携の入り口は?
まずは、公民連携が始まるタイミングです。
民間企業との繋がりのきっかけは、大きく以下の3つがあります。
このようなきっかけを通じて、対話やオンラインでのやりとりが始まります。
私の経験上、自分からきっかけを作りにいく場合は一定の提案があった方が話をしやすく、相手からや第三者からの場合は何かしらの提案がありました。
注意点として、お役所的な対話や対応にならないことが大切です。
第一印象は、今後の連携を進めていく上でも本当にポイントになるので、相手を見て適切な姿勢をするように努めましょう。
私は、相手から極力アイデアや提案を引き出せるように、フランクな姿勢でお話することを心がけています。
本音を引き出すために、雑談もしっかりとします。
そこで出てきた言葉を一度分解して、再度組み立て直すことで、アイデアが形になることが多かったです。
庁内調整・マッチングをする!
次に、庁内調整です。
おそらく、ここが一番大変で、一番力が試される場面になります。
各部署に対する「調整力」と「巻き込み力」が問われるでしょう。
私が1年半の濃い実践を通じて感じた庁内調整のコツは、以下の5つです。
- 腹を割って話を出来る関係性を築く!
- 多角的な目線で物事を捉える!
- 庁内照会を活用する!
- 情報はいろんな人と常に共有する!
- ゴールまでのストーリーを描く!
特に大切なことは、ゴールまでのストーリーを描いてみることです。
このストーリーの可否は問いません。
一度無理やりにでもゴールまでの線を描き、そこから修正していきましょう。
これができるかできないかでは、大きく仕事の進め方が変わります。
そして、民間企業担当者と各部署担当者を引き合わせましょう。
ここでの引き合わせ会議で、コーディネーターとしての力が試されます。
雑談だけで終わるのではなく、共通のビジョンを描けるか、また、次の動きを決めることができたかなど、しっかりと場を回しましょう。
その内容を踏まえて、どのような形で連携していくのかを検討します。
そして、必要があれば、連携協定締結という選択をする形になります。
そして、部長会議や理事者レクを通じて、民間企業とのこれまでの経過報告と今後の方針決定を行なってもらいます。
ここからは、いかにして理事者の首を縦に振らせるかということです。
そのためには、事前にある程度の根回しをすると効果的かもしれませんし、その場のプレゼン力で勝負しても良いかもしれません。
しかし一番大切なポイントは、「連携したらどうなるか?」のイメージを明確に持ってもらうことです。
私の経験上、このイメージを持ってもらえた案件は、全て許可を得ることができました。
その一つの方法として、わかりやすい資料作成です。
資料作成は、元三芳町の佐久間さんの本が、バイブル的に良本なので、みなさんもご参考にしてください。
協定締結式に向けた準備をする!
次に、協定式の準備です。
相手との打ち合わせ内容が盛り沢山なので、一つずつ確実にチェックしましょう。
- 協定書の内容確認
- 式典の実施方法
- 日程と会場確保
- シナリオや会場レイアウト作成
- プレスリリース準備
- 会場備品準備
- 理事者へ説明
ポイントとしては、相手と一つひとつ具体的なイメージを共有しながら打ち合わせを行うことで、ミスなくスムーズな調整が出来るでしょう。
まずは協定書の内容確認、そして、式典の全体像を決めていきます。
その後、日程の調整を行いましょう。
日程が確定したら、会場の確保や関係部署への共有を行い、当日必要な資料として、以下の4つを作成します。
- 次第
- 進行シナリオ
- 会場レイアウト
- 想定QA
そして、並行してプレスリリースについての準備も行います。
この際の確認ポイントとしては、いつプレスリリースするのか、相手と全く同じものを出すのかの2点です。
あとは、相手との具体的な調整を細かく行いましょう。
また、私が一つ解決しきれなかった課題として、プレスリリース先の少なさがありました。
画像に記載されているものだけでは、満足なメディア提供とは言えないと痛感しました。
そのため、ここに載せていないメディアとの繋がりも、個人的に多数つくる努力をしました。
みなさんも、おそらく一つの大きな課題になると思います。
マスメディアだけではなく、WEBメディアも含めて、様々な媒体へのアプローチ手段を考えてみましょう。
そして、資料やプレスリリースなど準備がある程度進んだ段階で、会場で必要となる備品の最終確認を行いましょう。
私は、主に以下のものを準備していました。
- マイク
- 演台
- 調印式用のペン
- 協定書バインダー
- バックボード
- タイトルボード
- ゆるキャラ
これくらい準備をしていれば、ある程度は何とかなりました。
そして、最後に理事者へ当日の流れをしっかりと説明すれば、準備は完了となります。
「準備が8割」と言われるように、ここまでしっかりと準備をすることができれば、当日は胸を張って挑むだけです。
協定締結式当日の心構え!
次に、協定締結式当日の動きです。
基本的には、時間に余裕を持ちながら、事前に作成した会場レイアウトの通りの準備を行います。
また、相手方の担当者にも早めに来庁してもらい、細かい打ち合わせをしておくと万全かもしれません。
そして、シナリオに沿ってリハーサルもしておきましょう。
リハーサルをするとしないとでは、心の余裕が全然違います。
いきなり本番を迎えてバタバタしないためにも、リハーサルはしっかりと行いましょう。
そして私は、式典1時間前には、以下の4つを必ず自問自答するようにしています。
- 備品の準備を忘れていないか?
- 資料の配布部数を間違っていないか?
- 人員配置などの準備は大丈夫か?
- 今の自分の心の準備は大丈夫か?
最終チェックも怠ることなく、一つひとつ丁寧に仕上げましょう。
そして、本番はシナリオ通りに粛々と行うことで、より良い式典になることでしょう。
アフターフォローも大切に!
最後に、アフターフォローについてです。
公民連携は、協定書を締結したら終わりではありません。
あくまで、協定書はスタート地点です。
担当部署との取り組み状況やフォロー、そして、後追いを欠かさず行いましょう。
また、大切なポイントとしては、具体的な取り組みまで深く介入しないことです。
あくまでコーディネーターとしての動きをすることに徹しましょう。
また、取り組みに対する情報発信も積極的に行い、公民連携の実績の見える化をすることも大切です。
そして、年度末あたりに庁内照会にて、全庁的に取り組み状況の集計を行い、共有することで、「あそこの部署では、こんなことやってるんだ!」という気付きにもなります。
各部署を横軸に繋ぐコーディネーターとしての役割があることもしっかりと意識しながら、協定締結以後も動いてみましょう。
まとめ
今回は、公民連携実務担当者必見!1年半で15の協定締結をした私が行った公民連携の実務について、ご紹介しました。
公民連携と一括りに言っても、自治体によって様々な方法があります。
本記事は、富田林市バージョンということで、ご覧いただければ幸いです。
今後、全国的にも公民連携の手法は、増えてくるものだと想定しています。
自治体運営を適切に行い、多様性のある住民サービスに対応していくためにも、必要なものでもあります。
どこかの自治体で、私の今までの実務経験が役に立てば嬉しいです。