「市民からの問い合わせが減らない!」
「提出書類に誤りが多い!」
あなたは、このようなことを思ったことはないでしょうか?
このような事例の根本的な原因は、実は、私たち自治体が出す文書にあります。
最近では、様々なセミナーや書籍で「伝える」と「伝わる」の違いについてのお話を耳にする機会も増えました。
まさに自治体の文書は、住民に「伝える」ことは成功しているかもしれませんが、多くの場面で「伝わる」ことには失敗しているのです。
そして、「伝わる」に失敗することで、住民はどのように行動すれば良いのか疑問を抱き、電話や窓口での質問という行動を起こします。
もしも、最初から住民に対して「伝わる文書」を出すことが出来ていれば、住民も理解・納得した行動を行い、自治体への問い合わせを減らすことにも繋がるかもしれません。
では、「伝わる文書」にするためには、どのようにすれば良いでしょうか?
今回は、自治体のわかりにくい文書を「伝わる文書」へ改善するための5つのポイントについて、ご紹介します。
自治体の文書がわかりにくい理由とは?
自治体の文書は、一般的に「わかりにくい」と言われることが多いです。
その理由は様々ありますが、その中でも私が「わかりにくい」と特に強く感じている5つの理由について、まずはご紹介します。
文字が多過ぎる!
まずは、文字が多過ぎることです。
みなさんも、自治体の文書は「文字だらけ」という印象がありませんか?
文字が多過ぎる文書は、読むだけでも体力と労力を使います。
文字が多過ぎる文書を読んで、「なるほど!」となる人はなかなかいないでしょう。
わかりやすい一つの事例が「広報誌」です。
「文字だらけの広報誌を読みたいか?」とシンプルに自分へ問いかけてみてください。
私は、文字だらけの広報誌を見たときは、見出しすら読もうと思いません。
深く読む人も多くいるとは思いますが、文字量の多さが問い合わせに繋がっていることは、間違いないです。
広報誌に対する考え方や視点は、以下の動画が非常に参考になります。
ぜひみなさんもご覧ください。
不必要な情報が多い!
次は、不必要な情報が多いことです。
自治体の文書は、何かと注釈や例外を入れようとする傾向にあります。
しかし、それらは住民にとって必要な情報でないことがほとんどです。
つまり、注釈や例外の記載は、実態として「自治体の言い訳」的な情報となっているのです。
このような不必要な情報を入れることで、「本当に伝えたい情報」が薄くなる可能性があります。
苦情などのリスクを避けるために様々な情報を載せているのだと思いますが、その結果、余計な問い合わせに繋がっている可能性があるということも認識しておきましょう。
ターゲットが設定されていない!
次は、ターゲットが設定されていないことです。
地方公務員は、法律で定められた「公平性」という絶対的なルールがあります。
地方公務員法第30条
すべての職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行にあっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
しかし、「公平性」に縛られ続けた結果、ターゲティングをせずに誰に対して届けたいのかわからない文書が、当然のように生まれています。
ターゲットが漠然と設定されることで、文書全体の伝えたい内容も漠然となるかもしれません。
その結果、住民へお知らせしたい内容の軸がブレてしまう恐れもあります。
もしかしたら、ターゲットが設定されていないことが、地方公務員の「伝わる文書」の一番の障壁と言えるかもしれません。
住民の気持ちに寄り添っていない!
次は、住民の気持ちに寄り添っていないことです。
まさに「伝える」と「伝わる」の違いが表れる部分です。
「伝える」とは、自治体から住民への一方通行を指す言葉です。
この状態で満足している行政文書がほとんどであり、住民との気持ちに差がある状態となっています。
一つのわかりやすい事例としては、税金や保険などにおける専門用語の多さです。
自治体では「当たり前」のように使う言葉でも、住民にとっては「当たり前でない」のです。
私たちも普段聞き慣れない言葉を耳にすると、抵抗を持つと思います。
その感覚を忘れないように、「読み手」の気持ちになることが重要であると言えるでしょう。
結論がわからない!
次は、結論がわからないことです。
様々な自治体の文書を読んでいると、住民に何をしてほしいかわからないものが目立ちます。
つまり、「住民にどのような行動をしてほしいのか?」がわかりません。
特に、結論がわからない文書の代表は、広報誌です。
いわゆる「言い訳広報」と言われている問題です。
広報誌には、行政に関する情報が1から10まで全てが載っています。
「広報誌に載せたら、自治体としてはお知らせをした!」という感覚を持ってしまうことが、一つの大きな要因と考えられるでしょう。
「伝わる文書」へ改善するために意識したい5つのこととは?
では、自治体の文書を「伝わる文書」へ改善するために、どのようなことを意識すれば良いのでしょうか?
今回は、私がおすすめする5つのポイントについて、解説します。
住民のことを知る!
まずは、住民のことを知ることです。
みなさんは、住民のことを勝手に知った気になっていませんか?
住民のことを知る方法として、以下のようなことが考えられます。
- 地域の現場を直接見る
- SNSでリアルな声を聞く
- 地域を分析する
- アンケート調査をする など
積極的に住民のことを知ることで、住民がどのような状態か、どのような情報を求めているかがわかるでしょう。
その結果、本当に必要な情報を届けることに繋がります。
ターゲットの設定をする!
次は、ターゲットの設定をすることです。
ターゲットを設定するコツは、より具体的で解像度の高いペルソナ設定をすることです。
つまり、漠然としたターゲット設定ではなく、具体的な一人を思い浮かべてみるものです。
まずは、「どの年代のどのような人に来てほしいか?」など、メインとなるターゲット設定をするところから始めてみましょう。
メインターゲットに寄り添った文書を作ることが、「伝わる文書」の第一歩なのかもしれません。
具体的な行動変容を促す!
次は、具体的な行動変容を促すことです。
簡単に言えば、「住民にどのように動いてほしいか?」です。
自治体の文書は、「伝える」だけでなく「伝わる」からこそ価値が生まれます。
そして、「伝わる」文書とは、具体的な行動に移してもらうことが重要です。
具体的な行動変更を促すためには、住民が「自分事」としてイメージしやすい文書にすることが望ましいです。
自治体の文書を読んで、住民が「自分はこう動けば良いんだ」と思えば良いのです。
実際に自分で文書を読んでみて、「自分なら動くかどうか?」という目線で判断するところから始めてみてください。
視覚的にわかりやすくする!
次は、視覚的にわかりやすくすることです。
住民は、地方公務員ほど文章に慣れていません。
そのため、視覚的にわかりやすくすることが、シンプルに一番伝わります。
視覚的にわかりやすくするためには、以下のような方法が考えられます。
「デザイン」に関する本を読むことで、解決の糸口を掴むことができるかもしれません。
- 図やイラスト、写真を使用する。
- 漢字だらけにならないようにする。
- 改行や空白行を工夫する。
- UDフォントなどを活用する。など
積極的に文書をつくる!
最後は、積極的に文書をつくることです。
「伝わる文書」は、知識として作り方を学ぶだけで身につくものではありません。
自分で何度も作ることで、はじめて「伝わる文書」へと変化していくものです。
そのため、最初は失敗しても良いのです。
失敗を失敗と捉えるのではなく、成功への一歩と考えるようにしましょう。
そして、少しずつ場数を踏むことで、「伝わる文書」が作れるようになるでしょう。
まとめ
今回は、自治体のわかりにくい文書を「伝わる文書」へ改善するための5つのポイントについて、ご紹介しました。
「伝わる文書」に改善するためには、まず「なぜ伝わらないか?」を知ることが重要です。
「なぜ」を解決することで、少しずつ「伝わる文書」に近付きます。
そして、「伝わる文書」で住民の理解や納得に繋がり、より良い関係性もできるでしょう。
また、自治体の文書作成ルールとして完璧な文書であったとしても、住民に伝わらなければ0点の文書です。
そのため、自治体のルールに縛られるのではなく、あくまで「住民目線」を第一に考えてみてください。
いきなりの成功は難しいかもしれませんが、共に「伝わる文書」を目指して頑張りましょう。