「地方公務員って、どれくらいボーナスもらってるの?」
「ニュースに出ているのは「平均」ばかりなので、若手地方公務員の実態を知りたい!」
公務員志望の学生などから、この1年間で上記の質問を多数受けました。
実際に、地方公務員のボーナス支給額が気になっている人は、とても多いのではないでしょうか?
民間企業のボーナスは、会社の業績や方針次第で大きく左右されます。
しかし、地方公務員のボーナスは、自治体の条例などにより「支給」が明記されています。
好景気でも不景気でもほとんど大きく変わらないものが、地方公務員の給料やボーナスだと私は認識しています。
では、若手地方公務員である私の実際のボーナス支給額は、どれくらいの金額でしょうか?
今回は、若手地方公務員の給料の実態として、高卒採用12年目31歳の私のボーナス明細を実例に、ご紹介します。
地方公務員の「ボーナス」とは?
まずは、そもそも地方公務員のボーナスがどのようなものかを確認してみましょう。
ボーナスとは?
ボーナスとは、一般的に「賞与」や「特別給与」と言われます。
毎月の給料とは別のもので、夏と冬の年2回支払われる形が一般的となっています。
その中でも地方公務員のボーナスは、支給日や対象者、支給額の計算方法などのすべてが条例などで定められています。
そのため、地方公務員のボーナスは、基本的に「支払われる」ことが前提となっているのです。
民間企業のボーナスとの違いとは?
地方公務員と民間企業のボーナスの違いは、主に「民間企業にはボーナスの支給義務がない」という点です。
民間企業は、「企業が必ず支払わなければならない」と法律で決められているわけではありません。
そのため、仮に「業績低下により財政的な余裕がない」といった理由でボーナスの支給がなかったとしても、違法ではないのです。
また、ボーナスの支給回数も民間企業によって異なり、「年1回のみ」や「年3回」という民間企業も散見されました。
そもそも、ボーナスを制度として導入していない民間企業もあります。
例えば、毎月の給料にボーナスを12回に分けて支払っているパターンや、ボーナスを支給せずに基本給料を高めに設定するパターンです。
そのため、「ボーナスが支給されないから年収が低い企業」と一概に言えないでしょう。
地方公務員のボーナスの支給日や計算方法とは?
次に、地方公務員のボーナスの支給日や決定方法を確認しましょう。
ボーナスの支給日・計算方法を覚えるのは、とても簡単です。
地方公務員のボーナスは、自治体によって異なる!
まず、地方公務員のボーナスは、自治体によって異なります。
しかし、制度の大枠は同じなので、本記事では大枠の部分をご紹介します。
ほとんどの自治体では、国家公務員のボーナスに準じる形で、ボーナスの設定をしています。
都道府県や政令指定都市など、自治体によってボーナスの時期や算定方法が異なることもありますが、ほとんどは同じ設計です。
地方公務員のボーナスの支給日は?
次は、地方公務員のボーナスの支給日です。
ボーナスの支給日は、ほとんどの自治体で以下のように条例に定められています。
- 基準日:6月1日、12月1日
- 支給日:6月30日、12月10日
- 支給日が土曜日・日曜日の場合は、前営業日に支給
なお、国家公務員における2020年のボーナス支給日は、6月30日と12月10日でした。
つまり、地方公務員も国家公務員と同様の形で支給されていることがわかります。
地方公務員のボーナスの計算方法は?
次は、地方公務員のボーナスの計算方法です。
地方公務員のボーナスは、2つの手当の合算額となります。
- 期末手当:勤務状況に応じて支給される手当
- 勤勉手当:成績に応じて支給される手当
細かい計算方法は、自治体が定める条例や規則によって異なります。
しかし、ほとんどの自治体では、以下のような計算式となります。
(給料+地域手当+扶養手当)×支給月数
きちんとした計算をするには、様々なことを覚える必要があるかもしれませんが、概算の年額を算出するには、この計算式で十分でしょう。
また、支給月数については、以下のような違いがあります。
- 期末手当:全員同じ支給月数
- 勤勉手当:成績によって支給月数が増減
計算額よりも実際のボーナス額が多い時は、成績が良かったんだと喜びましょう。
なお支給月数は、人事院勧告などで毎年のように変化しています。
2020年度における地方公務員のボーナス支給額は、約4ヶ月分相当分です。
つまり、1年間で月給の約4ヶ月分のボーナスが支給されているという考え方になります。
ボーナスに関する根拠条例や規則の調べ方!
次は、ボーナスに関する根拠条例や規則の調べ方です。
地方公務員のボーナスは、以下の名前と自治体名を検索ワードにすることで、調べることができます。
- 一般職の職員の給与に関する条例
- 期末手当及び勤勉手当に関する規則
例えば、富田林市であれば、「一般職の職員の給与に関する条例 富田林市」です。
自治体によって名称が少し異なるかもしれませんが、ほとんどはこのような検索方法で見つけることができるでしょう。
もしそれでも計算方法がよくわからず詳しい計算方法を知りたい方は、所属する自治体の給与担当に確認してみてください。
高卒採用12年目31歳の私のボーナスの内訳とは?
では、ここで私のボーナス支給明細をご紹介します。
受け止め方は人それぞれだと思いますが、一つの事例としてご参考にしてください。
支給合計額
まずは、支給合計額です。
ボーナスの支給項目は、「期末手当」と「勤勉手当」のみです。
以下が、それらの内訳です。
- 期末手当:351,787円
- 勤勉手当:262,116円
支給合計額は、613,903円です。
この支給合計額だけを見れば、「地方公務員のボーナスはやはり多いな!」と私も客観的に感じました。
では、その計算式を確認していきましょう。
私の基本給料は、富田林市の給与条例の給料表3級12号「247,900円」です。
地域手当は6%あるので、247,900円の6%である「14,874円」を加算します。
ボーナスの計算式には扶養手当も加算されるのですが、私は対象外なのでありません。
そして、私は4月から副主任に上がったこともあり、上記に加えて5%の職域加算が反映されていました。
つまり、計算式としては、以下のようになります。
(247,900円+14,874円)×1.05=275,912円
この基準額に対して、令和3年6月ボーナスの支給月数である「期末手当1.275ヶ月」と「勤勉手当0.95ヶ月」を反映します。
その結果、以下のような計算式と結果になります。
- 期末手当:275,912円×1.275ヶ月=351,787円
- 勤勉手当:275,912円×0.95ヶ月=262,116円
控除合計額
続いて、控除合計額です。
これは、いわゆる「ボーナスから引かれる金額」です。
以下が、それらの内訳です。
- 共済組合掛金91,090円
- 所得税32,027円
- 生命保険4,350円
- 組合費5,000円
給料の支給時と同様に、「共済組合掛金(年金や保険料等)」にかなりのお金を持っていかれています。
生命保険と組合費は任意加入のものですが、共済組合掛金と所得税は誰しもが不可避です。
ボーナスをそのままもらえると思うのではなく、引かれるお金も一定あることを理解しておきましょう。
手取り金額
最後に、手取り金額です。
支給合計額613,903円から控除合計額132,467円を差し引いて、手取り金額は、481,436円となりました。
これが高卒採用12年目31歳の私のボーナスの手取り金額です。
ここから、家計へ40万円、残りのお金を自由に使えるお金としました。
若手地方公務員は、毎月の普段の給料がそこまで多くありません。
そのため、ボーナスのお金で採算をとっていることも多々あります。
例えば私の場合は、税金や車検費用、家電やパソコンなどの買い替え費用、祝儀費用、将来のための貯金、緊急費用が、主にボーナスからの支出で計画しています。
「ボーナスをもらうことは当たり前ではない」という意識を持つことが大切!
ここまで、若手地方公務員のリアルなボーナスの支給額について、ご紹介してきました。
しかし、私たち地方公務員が意識しておくべきことがあります。
それは、「ボーナスをもらうことは当たり前ではない」ということです。
新型コロナウイルス感染症による影響を受けて、近い将来、地方公務員も給料やボーナスが下がると予想されています。
「給料を下げるな!」
「ボーナスの適正な支給を!」
このような声が、全国各地の自治体にある組合などから上がっていると思います。
しかし、この世の中の情勢ではボーナスの支給額が下がっても仕方がないものだと私は思いますし、そもそも「もらえるだけでもありがたい」という時代だと感じています。
現代社会では、会社からの給料が減り続け、ボーナスをもらえない人は多くいます。
私たち地方公務員は、「この社会の現状の中でボーナスをもらっている」という自覚を持ちながら、「地域や社会に対して還元していく責務があるのではないか?」と私は考えています。
そのため、「ボーナスをもらって当たり前」と思いながらボーナスを受け取っている人は、認識を改める必要があるのではないでしょうか?
もちろん、ボーナスは「労働の対価」の一つです。
しかし、ただ「対価を受け取る」だけでなく、「対価の還元」まで意識してみませんか?
私は、毎年ボーナスを受け取る度に、このように考えて行動するようにしています。
一人でも多くの地方公務員が、同じような想いを持って行動してくれることを切に願っています。
地方公務員の給料とボーナスは、人事院勧告に左右される!
最後に、地方公務員の給料とボーナスは、人事院勧告に左右されることもご紹介しておきます。
公務員の給料とボーナスは、毎年8月に人事院が出す「人事院勧告」によって決められます。
人事院勧告を簡単に言えば、「国家公務員と民間企業の給与水準の釣り合いをとるための勧告」です。
「人事院勧告」自体は、国家公務員の給与や手当の改定です。
しかし、地方公務員も国家公務員に準拠することがほとんどであるため、基本的には「人事院勧告」と同様の改定になることがほとんどです。
一つの例で言えば、2020年のボーナスは、「年間4.45ヶ月分の支給をしなさい(0.05ヶ月分の減額)」という勧告が、2020年11月に出ました。
この時点で既に6月のボーナスの支給は終わっていましたが、この「人事院勧告」の内容に合わせるために、各自治体では12月議会で給与条例等が改定され、生じた差額は12月の給料やボーナスで調整されました。
令和3年8月に出される人事院勧告次第では、この事例と同様に、本記事でご紹介したボーナス支給額から下がる可能性も十分にあります。
そのため、「人事院勧告」は、私たち地方公務員にとってとても重要なものであると言えるでしょう。
まとめ
今回は、若手地方公務員の給料の実態として、高卒採用12年目31歳の私のボーナス明細を実例に、ご紹介しました。
地方公務員のボーナスは、ほとんどの自治体で国家公務員と同じ計算式となっています。
しかし、自治体によっては、計算式が少し異なっていることもあります。
そのため、まずは「自治体の給与条例」を確認してみてください。
そして、日本全体の平均値などを調べるためには、総務省が取りまとめている『地方公務員給与実態調査結果』がご参考になるでしょう。
私たち地方公務員にとって一番重要なことは、「ボーナスを受け取ることは当たり前ではない」と再度認識することです。
一般的には、ボーナスの支給がない民間企業も多く存在しているのです。
不景気な世の中でも「ボーナス」というお金をもらっているからこそ、きちんと目の前の地域課題と向き合って、自分にできる行動を起こしていきましょう。