令和3年8月19日、奈良県三宅町の職員採用応援イベントで登壇の声がかかり、奈良県三宅町の森田町長と元つくば市副市長の毛塚さんと「ビジョン・ミッション・バリュー」について語り合う機会がありました。
「ビジョン・ミッション・バリュー」は、民間企業ではよく聞く言葉です。
しかし、地方自治体では、ほとんど聞くことがありません。
本イベントを通じて、私は地方自治体における「ビジョン・ミッション・バリュー」の価値と今後の可能性を感じることができました。
そして、これからの未来がワクワクするような時間となりました。
では、「ビジョン・ミッション・バリュー」とは、どのようなものなのでしょうか?
今回は、奈良県三宅町に学ぶ、地方自治体における「ビジョン・ミッション・バリュー」について、ご紹介します。
経営学者のピーター・F・ドラッカーの提唱!「ビジョン・ミッション・バリュー」とは?
まずは、「ビジョン・ミッション・バリュー」が、そもそもどのようなものかを確認してみましょう。
「ビジョン・ミッション・バリュー」は、多様化するビジネス社会の企業経営方針の一つと言われています。
元々は、経営学者のピーター・F・ドラッカーが、2003年に出版された著書『Managing in the Next Society(ネクスト・ソサエティ)』の中で提唱を始めました。
ビジョン:自分の組織が社会の中で実現したい姿
ミッション:日々果たすべき社会的な使命感に基づくもの
バリュー:行動基準や価値観
これからの企業の大きな課題は、「存在意義」や「社会的正当性」を対内外的に示していくことと言われています。
そのために必要となるものが、まさに「ビジョン・ミッション・バリュー」とのことでした。
奈良県三宅町のビジョン・ミッション・バリューとは?
では、地方自治体におけるビジョン・ミッション・バリューとは、どのようなものなのでしょうか?
今回は、地方自治体の中でも先進事例となっている奈良県三宅町のビジョン・ミッション・バリューを例に、確認してみましょう。
奈良県三宅町とは?
奈良県三宅町は、日本で2番目に面積が小さな約6,700人が暮らす町です。
大阪や京都の都心部からも訪れやすい場所に位置しています。
私も実際に訪れましたが、大阪からでも30分から40分ほどの良い距離感でした。
最近の瞬な話題は、奈良県三宅町交流まちづくりセンター”MiiMo”(みぃも)の存在です。
公式の案内では「公民館や図書室、学童保育などの機能を兼ね合わせた複合施設」と紹介されていますが、私の主観では、三宅町の住民が交わる「繋がり創出拠点」です。
これからの”MiiMo”には、ぜひみなさんもご注目ください。
奈良県三宅町と言えば、2016年に、32歳という若さで当選した森田町長によるご活躍が目覚ましい街でもあります。
特に、公民連携によるまちづくりは、全国の地方公務員の間ではとても有名です。
「新・公民連携最前線」に森田町長のインタビュー記事も載っているため、ぜひご参考にご覧ください。
奈良県三宅町のビジョン・ミッション・バリュー
奈良県三宅町は、職員採用試験を実施するにあたり、ビジョン・ミッション・バリューを打ち出しました。
まずは、その中身を確認してみましょう。
ビジョン:自分らしくハッピーにスモール(住まうる)タウン
ミッション:『伴走者』であり『共創者』として、共に成長し続けます
バリュー:対話・挑戦・失敗
奈良県三宅町の森田町長は、ビジョンに共感してくれる仲間を集めたいという、熱い想いを持たれています。
また、町役場の職員だけでなく住民にも広く伝えることで、まちづくりに関わるきっかけになれば良いという、強い願いも込められています。
詳しくは、奈良県三宅町公式noteにまとめられていますので、こちらをご参照ください。
地方自治体にもビジョン・ミッション・バリューが必要な理由とは?
では、なぜ自治体にもビジョン・ミッション・バリューが必要なのでしょうか?
ここでは、その理由について、考えてみたいと思います。
そもそもビジョンがわからない!
まずは、そもそもビジョンがわからないことがあるでしょう。
地方自治体は、民間企業と大きく異なることが1つあります。
それは、トップが4年に一度変わる可能性があることです。
地方自治体において、首長が変わればビジョンも変わります。
もちろん、地方自治体のビジョンや地方公務員のミッション・バリューは、総合計画や人材育成基本方針などで語られています。
しかし、その内容は、漠然としていてイメージが湧きにくいものとなっています。
更に、そもそもあまり読まれていないため、どこにも浸透していません。
つまり、総合計画や人材育成基本方針などで語られていたとしても、自治体職員はあまりビジョンを理解せずに働いている人が多いという現実問題があります。
ミッションとバリューは全国共通!
次は、ミッションとバリューは、全国共通ということです。
地方自治体において、求められているミッションと提供できるバリューは、全国共通しているものと言えるでしょう。
地域で担う役割や取り組んでいる仕事は、全国の自治体で大きな差はありません。
つまり、どのように言語化・可視化するかだけの違いだと、私は考えています。
このミッションとバリューをわかりやすく見せることで、地方自治体で働く地方公務員の使命感ややりがい、そして、チャレンジ精神溢れる職員の育成にも繋がるのではないかと思います。
わかりやすく言葉にするだけでも、非常に大きな意味を持つのが、ビジョン・ミッション・バリューの価値だと言えるでしょう。
地方自治体がビジョン・ミッション・バリューを策定する価値とは?
では、地方自治体が「ビジョン・ミッション・バリュー」を策定する価値は、どこにあるのでしょうか?
ここでは、「ビジョン・ミッション・バリュー」の策定によって生まれる価値を考えてみます。
誰がみてもわかりやすい軸ができる!
まずは、誰がみてもわかりやすい軸ができることです。
軸がブレてしまうと、本当に良いサービスを住民に届けることはできません。
- 何のために地方自治体は存在しているのか
- 何のためにこの事業を行なっているのか
このように、普段の地方公務員の仕事の根幹をしっかりと定める必要があります。
地方自治体を長期的な視点で見たときに、この「ビジョン・ミッション・バリュー」がとても重要な役割を果たすのは、間違いありません。
ビジョンを通じて、みんなが同じ方向へ動き出す!
次は、ビジョンを通じて、みんなが同じ方向へ動き出すことです。
コロナ禍で公務員の離職が進む一つの理由として、ビジョンの不明確さによるやりがいの低下があると、私は推察しています。
「どの方向を向いて仕事をしたら良いのかわからない。」
「何をやっているんだろう?」
「何のために仕事をしているんだろう?」
このような疑問を持ちながら仕事をする地方公務員は、年々増えているように感じています。
その中で、ビジョンを明確に示すだけでも、職員全体の目指すべき未来がひとつになり、向かうべき方向ややりがいの向上にも繋がると考えられます。
その結果、普段の業務や事業における「やるべきこと」と「やるべきでないこと」の判断がつくようになってくるでしょう。
そして、業務の効率化や地域をより良くする新しい取り組みが生まれたりするのです。
更に、住民にも浸透することで、住民力も上がってくるかもしれません。
採用活動にも良い効果が期待できる!
最後は、採用活動にも良い効果が期待できることです。
現在、地方公務員における採用活動は、様々な課題があります。
- エントリー数の減少
- 学生と出会えない
- 内定辞退率が高い
このような課題は、ほんの一例です。
しかし、「ビジョン・ミッション・バリュー」を策定し公表することで、同じビジョンを持った人材に出会う可能性が高くなります。
「ビジョン・ミッション・バリュー」という不動の軸を採用メッセージとして確立することで、地域の独自性や価値が学生にも見えるでしょう。
そこに共感した人材が集まるとなれば、それほど嬉しいことはありません。
未来の地域を築く人材の獲得のためにも、「ビジョン・ミッション・バリュー」はとても有効だと考えられます。
ビジョン・ミッション・バリューを策定した後に、継続させていくためにはどうしたらいいのか?
地方自治体における「ビジョン・ミッション・バリュー」は、策定よりも継続させることが一番難しいかもしれません。
では、どのようにしたら良いのでしょうか?
以下は、私の頭の中にある一案ですので、ご参考程度にご覧ください。
声に出して発信し続ける!
まずは、声に出して発信し続けることです。
「ビジョン・ミッション・バリュー」を様々な場で言い続けることは、とても大切です。
特に、首長は、様々な人と対話する場面が非常に多いです。
その度に、何度でも発信することが重要でしょう。
そして、まずは、絶対に職員へ浸透させなければなりません。
職員が能動的に「ビジョン・ミッション・バリュー」を語るようになることで、住民にも伝わっていくかもしれません。
最終的には、口コミレベルで広がっていくことが最高の形だと、私は考えています。
部署単位でのビジョン・ミッション・バリューを考えてみる!
次は、部署単位での「ビジョン・ミッション・バリュー」を考えてみることです。
部署単位で「ビジョン・ミッション・バリュー」を策定することで、組織内での意思統一や予算策定の方針などに役立つでしょう。
また、職場内でのやりがい向上やコミュニケーションの活性化にも繋がるかもしれません。
そして、部署単位での「ビジョン・ミッション・バリュー」は、わざわざ外部へ公表をする必要はありません。
あくまで、自治体内部のみで共有するレベルで良いでしょう。
多方面に共犯者をつくる!
最後は、多方面に共犯者をつくることです。
簡単に言えば、いろいろな人を巻き込むということです。
例えば、すぐにでも取り組める方法として、自治体職員や住民に「ビジョン・ミッション・バリュー」を語ってもらい、それを記事などを通じて見える化する方法が思い浮かびます。
記事などを通じた見える化により、関わった人たちが少しずつまちづくりに巻き込まれます。
このように、少しずつ人を巻き込みながら、自発的に話題に出せるようなきっかけづくりをしても、面白いかもしれません。
まずは、身近な誰かから始めてみてはいかがでしょうか?
まとめ
今回は、奈良県三宅町に学ぶ、地方自治体における「ビジョン・ミッション・バリュー」について、ご紹介しました。
奈良県三宅町の「ビジョン・ミッション・バリュー」を通じて、全国各地の自治体でも策定が進み、策定することが「普通」となれば良いなと思います。
地方自治体で働く一人の地方公務員として、この3つが明確に示されることで、やりがいやモチベーションにも繋がると感じています。
奈良県三宅町の「ビジョン・ミッション・バリュー」について、森田町長とつくば市元副市長の毛塚さんと3人で語ったイベントレポートに、より詳細なお話も書かれています。
ぜひこちらの2記事もご一読ください。