2021年10月20日に、ぎょうせいから『現場のリアルな悩みを解決する!職員減少時代の自治体人事戦略』が出版されました。
本書は、職員数が減少する中で考える「これからの自治体の人事戦略」について、丁寧にまとめられた1冊です。
現場の人事担当者が抱える悩みや課題だけでなく、未来の自治体の人事戦略についても深く考察されており、人事担当者は必読となるでしょう。
私自身も、これからの人事とキャリアについて、改めて考える良い機会になりました。
では、本書にはどのようなことが書かれているのでしょうか?
今回は、『現場のリアルな悩みを解決する!職員減少時代の自治体人事戦略』の感想について、ご紹介します。
本書の概要と感想!
『現場のリアルな悩みを解決する!職員減少時代の自治体人事戦略』(著者:稲継 裕昭氏、大谷 基道氏)
2021年10月20日発売
稲継 裕昭(いなつぐ ひろあき)
早稲田大学政治経済学術院教授。京都大学法学部卒、京都大学博士(法学)。大阪市職員(総務局、人事委員会事務局、市長室)、姫路獨協大学助教授、大阪市立大学法学部教授、同法学部長等を経て、2007年から現職。専攻は行政学、地方自治論、公共経営論。著書多数。
大谷 基道(おおたに もとみち)
獨協大学法学部総合政策学科教授。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程研究指導修了退学。博士(政治学)(早稲田大学)。茨城県職員(人事課、国際交流課等)、(公財)日本都市センター主任研究員、名古屋商科大学教授等を経て、2016年から現職。専攻は行政学、地方自治論。
本書に書いていること!
まずは目次を確認してみましょう。
本書は、職員数が減少する中で考える「これからの自治体の人事戦略」について、丁寧にまとめられた1冊です。
現場の人事担当者が抱える悩みや課題だけでなく、未来の自治体の人事戦略についても深く考察されています。
特に、自治体職員の人事・組織に関する現状とこれからの変化に関することがわかりやすく、その中でもトータルな人事戦略の必要性が述べられています。
地方自治体として生き残っていくためにも欠かせない人事戦略の視点や、考え方に関するヒントが多く詰め込まれた必読書です。
本書を読んだ私の感想!
本書を読んだ私の感想は、「人事戦略をきちんと考えなければならない時代がきている」でした。
そもそも人事戦略は、すぐに実現できるものではありません。
様々な調整や分析を経て、はじめて実現できるものです。
そのため、今からしっかりと未来に向き合って、人事戦略を考える必要があるのです。
本書では、様々な悩みや課題を軸に、解決策や考え方が一つひとつまとめられていました。
まさに今、どのように考えて行動すべきかを理解することができるでしょう。
ぜひ人事担当者には、本書を手に取って、行動に移してほしいと思います。
本書で特に読んでほしい3つの内容!
本書は、これからの自治体の人事戦略について、学ぶことができた1冊でした。
ここでは、本書で特に読んでほしい3つの内容について、ご紹介します。
トータルな人事戦略を描くこと!
まずは、トータルな人事戦略を描くことです。
これは、本書の第1章の内容です。
まず、総務省の「自治体戦略2040構想研究会」の報告において、『半分の職員数でも担うべき機能が発揮される自治体』と明記されています。
これは絵空事ではなく、人口推計や社会のデジタル化などの様々なことを考慮した結果、おそらく訪れる未来と言えるでしょう。
その中で、今求められているものが「トータルな人事戦略」です。
トータルな人事戦略を描くことがいま求められている。
(引用:本書P.5より抜粋)
トータルな人事戦略とは、採用、配置、異動、能力開発、人事評価、昇任のあり方などを総合的に考える人事戦略のことです。
今後、職員数が更に減り続けると想定される中で、必要な行政サービスを提供し続けるには欠かせない考え方です。
「職員数を減らすことはありえない」という観点ではなく、未来を見据えた人事視点を持ってもらうためにも、ぜひ人事担当者以外にも読んでもらいたい内容です。
現場の悩みから問題点を分析する!
次は、現場の悩みから問題点を分析することです。
これは、本書の第2章の内容です。
第2章では、様々な現場における20の悩みの事例をもとに、自治体人事の問題点を分析しています。
例えば、以下のような悩みです。
- 採用試験は今のままでよいのか
- 意欲の低い職員が多い
- 若手がすぐ辞めてしまう
- 時間外勤務が減らない
- テレワークの導入が進まない
- 緊急時の人員体制が十分でない など
人事担当者が抱えている、もしくは、これから抱えるであろう悩みの分析や解決方法・考え方が、丁寧にまとめられています。
そして、これらの内容は、人事担当部局以外の管理職にも役に立つ内容となるでしょう。
主に管理職世代を中心に広く読んでもらい、ぜひ人事やチームの課題解決に向けて実践してみてください。
自治体職員の未来!
最後は、自治体職員の未来です。
これは、本書の第5章の内容です。
第5章では、今後の自治体職員の在り方や育成、そして、トータル人事システムの観点からの未来に対する考察が書かれています。
確実に訪れる未来だとは限りませんが、私たち地方公務員の未来を考える上で大切なキーワードが多く散りばめられています。
また、人事異動や評価、キャリア形成などの視点でも丁寧に整理されています。
その中でも特に、P.182にある「効果的なOJTのために」の内容を多くの人に読んでほしいと、私は強く思いました。
未来はまだまだ流動的に変化しますが、その変化に遅れないように、トータルな人事戦略で自治体職員の未来を考えるきっかけになれば良いなと思います。
まとめ
今回は、『現場のリアルな悩みを解決する!職員減少時代の自治体人事戦略』の感想について、ご紹介しました。
本書は、職員数が減少する中で考える「これからの自治体の人事戦略」について、丁寧にまとめられた1冊でした。
人事担当者のみではなく、管理職などのマネージャー職の方々にとっても、現場の悩みや課題を解決に導く本となるでしょう。
これからの自治体は「職員数の減少が当たり前」という視点を前提に、様々なことを考えなければいけません。
持続可能な自治体経営のためにも、一人でも多くの地方公務員に本書を読んでいただき、未来の自治体を考えるきっかけにしてもらえたらと思います。