「どのようにすれば、効果的に行政の情報発信をできるのだろうか?」
私は、広報担当部署に在籍していた頃から、ずっとこの課題を考えてきました。
ターゲットの設定やSNSなどのツールの活用などの勉強や実践もしてきましたが、「もっと"組織の情報発信"という目線で、根本的な改善策はないか?」と自問自答し続けてきました。
その結果、「情報発信の仕組みの改革」が一つの答えなのかなと、私は考えています。
全国各地の地方公務員仲間にも同様の質問をしたところ、同じような悩みや課題を抱えている広報担当部署の地方公務員は多くいました。
その意見交換内容を整理したものを、今回は記事として書かせていただきました。
では、どのような仕組みでしょうか?
今回は、効果的に行政の情報発信を行うために、広報担当部署に頼らない情報発信の仕組みを考えてみます。
そもそも行政の情報発信は、広報担当部署のみの仕事なのか?
まずは、行政の情報発信について、そもそもな部分から考えてみましょう。
行政の情報発信は、広報担当部署のみの仕事なのか?
まずは、行政の情報発信は、広報担当部署のみの仕事なのかという疑問です。
行政の情報発信において一番よくある形は、広報担当部署が全てを担ってしまう状態です。
簡単に言えば、「情報発信の仕事は、広報担当部署の仕事」と決めつけられている状態です。
私も広報担当部署時代に、何度も「情報発信は任せます!」と言われたことがあります。
しかし、本当に効果的な行政の情報発信をするためには、「各担当部署が主体的で自由に行政の情報発信をした方が良いのではないか?」と、私は思いました。
広報担当部署だけに任せることで、各担当部署において、情報発信を自分たちで考えないようになってしまう可能性があるかもしれません。
広報担当部署もプロではないことを理解する!
次は、広報担当部署もプロではないことを理解することです。
広報担当部署は、情報発信の方法論やツール活用などについては、他部署よりも長けています。
広報担当部署の職員の中には、ライティング力やデザイン力が高い職員もいるでしょう。
しかし、基本的には、あなたと同じように人事異動で偶然配属されただけの職員です。
もしかしたら、そこまでモチベーションが高くない職員もいるかもしれません。
そのことをきちんと理解しておきましょう。
【提案】効果的な行政の情報発信を行うための仕組みをつくる!
では、どのような形で行政の情報発信を行うと、一番高い効果が発揮できるのでしょうか?
私は、ここで「仕組み」の提案をしたいと思います。
ただし、「こうあるべき」というものではありませんので、行政の情報発信を考える一つのきっかけになれば幸いです。
広報担当部署と各担当部署における役割の「分散」と「明確な可視化」!
まずは、広報担当部署と各担当部署における役割の「分散」と「明確な可視化」です。
私は、広報担当部署に在籍していた頃に、「行政の情報発信は、どのような形で誰が行うと一番高い効果を発揮できるのか?」とずっと考えていました。
その中で、私が提案したい形は、以下のような役割の「分散」と「明確な可視化」です。
- 広報担当部署
①包括的な情報発信
②各担当部署の情報発信支援 - 各担当部署
①事業ターゲットに適切な情報発信
まず広報担当部署は、広報誌を製作する業務を担っていることから、自治体全体の情報が集まる部署です。
更に、先ほどもお話した通り、情報発信の方法論やツール活用などについては、各担当部署よりも長けています。
そして、各担当部署は、広報担当部署よりも具体的で明確なターゲティングが出来ます。
また、日頃から現場を見ているため、どのような情報発信ツールを活用すれば良いかも見えているでしょう。
このことから、私は、広報担当部署は、各担当部署へ文章・デザインなどのアドバイスや情報発信手段の検討などの悩みを一緒に考える"相談役"ポジションが良いのではないかなと考えました。
それぞれの部署の特徴を活かし、効果を最大化させるものです。
行政の情報発信を相談する仕組みをつくる!
次は、行政の情報発信を相談する仕組みをつくることです。
相談する仕組みとしては、事前に相談したい内容を「情報発信シート」にまとめて提出してもらい、広報担当部署が内容を事前に予習した上で、相談会が開催されるというものです。
この方法により、情報発信に対するモチベーション向上や課題解決に繋がり、また、広報担当部署の情報発信スキル向上も期待できるでしょう。
更に、広報担当部署職員の人事異動を通じて、自治体全体の情報発信レベルが上がることも想定できます。
2021年12月に発刊された『ジチタイワークスvol.17』によると、長崎県長崎市や東京都杉並区などの自治体には、実際に「情報発信シート」というものが存在するそうです。
ぜひジチタイワークスの内容も合わせてご覧ください。
「義務」と「評価」を入れる!
次は、「義務」と「評価」を入れることです。
必ずしも全ての職員が、行政の情報発信に対するモチベーションを持っているわけではありません。
そのため、ある程度の強制力も必要となってくるでしょう。
例えば、各事業計画や庁内の政策関連シートなどに盛り込む方法です。
そして、「いつ、どのように、誰に、どのような情報発信をするのか?」を明記することで、義務と評価を導入することができるでしょう。
広報担当部署に意識してほしいこととは?
先ほど提案した効果的な行政の情報発信を行うための仕組みをつくるためには、広報担当部署に意識していただきたいことがあります。
この内容は、普段の仕事でも是非実践してほしいことでもあるので、簡単にご紹介します。
情報発信のトレンドやツールを追う!
まずは、情報発信のトレンドやツールを追うことです。
世の中は、常に流れ続けています。
情報発信のトレンドやツールについても、同様に変化し続けています。
そのため、広報担当部署は、トレンドとツールを常に追い続けなければいけません。
情報発信のトレンドとツールを追うためには、日頃からのインプットへの意識が重要となるでしょう。
特に私は、TwitterなどのSNS検索や読書でのインプットをおすすめします。
広報担当部署以外の方にもおすすめしたいことなので、ぜひ実践してみてください。
信頼を得るために、寄り添う!
次は、信頼を得るために寄り添うことです。
各担当部署は、情報発信が苦手です。
この苦手意識に寄り添えるのは、広報担当部署の役割です。
そして、各担当部署の相談相手として信頼を得るために必要なことは、席に座らないことです。
信頼を得るために、庁内を走り回ってみましょう。
- 用事がなくても、会いに行く!
- こまめに顔を出して、情報交換をする!
- 各担当部署も忙しいことを理解する!
例えば、これらのことがポイントとして考えられるでしょう。
広報担当部署が各担当部署や現場に出て信頼関係を築くことで、より良い行政の情報発信に繋がると思います。
褒める文化をつくる!
次は、褒める文化をつくることです。
情報発信に対するモチベーションがない各担当部署に対して「義務」と「評価」を設けることにより、情報発信に対して「やらされている」という感じを覚えてしまうかもしれません。
しかし、理想の形としては、各担当部署の「やってみたい」「やりたい」という気持ちを引き出すことが大切です。
その仕掛けとして、私は褒める文化をつくることをおすすめします。
細かいお話ではありますが、少しでも良い情報発信をした部署や職員を大げさに褒めてあげてみると良いでしょう。
また、東京都杉並区が実践している「PRアワード」のような庁内表彰制度を設けても良いかもしれません。
人事異動後もスキルを活かす!
最後は、人事異動後もスキルを活かすことです。
地方公務員は、数年で必ず他の部署へ異動します。
もしも、広報担当部署のあなたが人事異動で部署が変わったとしても、広報担当部署で磨いたスキルを活かすことを意識してください。
広報担当部署経験職員は、包括的な情報発信の経験を積んでいるため、情報発信に対する広い視野と経験を持っています。
周りの職員を巻き込みながら各担当部署で経験を活かすことで、自治体全体としての情報発信力が上がるでしょう。
ぜひ積極的に、各担当部署から情報発信を変えてみてください。
各担当部署に意識してほしいこととは?
先ほど提案した効果的に行政の情報発信を行うための仕組みをつくるためには、各担当部署にも意識していただきたいことがあります。
なかなかいきなり意識することは難しいかもしれませんが、少しずつ始めてもらえると嬉しく思います。
広報担当部署とコミュニケーションをとる!
まずは、広報担当部署とコミュニケーションをとることです。
広報担当部署は、意外と各担当部署の細かい情報を持っていません。
また、各担当部署が、どのようなことに困っているのかもわかっていないかもしれません。
そのため、情報発信に悩む各担当部署のみなさんは、広報担当部署とのコミュニケーションを意識して実践してみてください。
コミュニケーションを通じて、情報発信の課題解決に繋がるかもしれません。
全ての部署と全ての職員が、情報発信への意識を持つ!
最後は、全ての部署と全ての職員が、情報発信への意識を持つことです。
やはり私は、すべての部署でそれぞれ情報発信を意識した業務をすることが、一番良いと考えています。
各担当部署は業務分野のプロでもあるため、各担当部署で情報発信することが一番伝わるでしょう。
各担当部署の中には、「普段の仕事が忙しい」という意見もあるかもしれません。
しかし、普段の仕事の中に「情報発信」はあるものです。
いきなり全てを変えることは難しいと思いますので、まずは出来る範囲から少しずつ意識して実践してみてください。
まとめ
今回は、効果的に行政の情報発信を行うために、広報担当部署に頼らない情報発信の仕組みを考えてみました。
長文で本記事を書かせていただきましたが、みなさんは、行政の情報発信を誰がどのような形で行うと一番高い効果を発揮できると思いますか?
本当に情報が必要な人たちへしっかりと届けるためにも、私は「手段」よりも前に「仕組み」を改めて見つめ直す必要があるのではないかと考えています。
長期的な視野で捉えると、各担当部署や職員個人が情報発信者の意識を持つことは、組織にとっても個人にとってもメリットは大きいでしょう。
しかし、この内容は、明確な答えがあるものではありません。
本記事を通じて、行政の情報発信の在り方を考えるきっかけになれば嬉しいです。