令和3年度、私は富田林市自主研究グループ支援制度を活用して「ConnecTon」という自主研究グループを仲間と共に立ち上げました。
今まで私は、様々なコミュニティ活動や交流会への参加を通じて、「公務員」という枠組みに縛られない多くの越境体験をしてきました。
越境体験による新たな繋がりづくりを通じて、「富田林市職員に繋がりの価値をもっと知ってほしい!」という想いを持ちました。
そして、私はその想いに賛同してくれた仲間と共に、富田林市自主研究グループ「ConnecTon」を立ち上げました。
では、富田林市自主研究グループ「ConnecTon」では、どのような話をしてきたのでしょうか?
今回は、地方公務員の繋がりの価値を考え行動するためのチームである富田林市自主研究グループ「ConnecTon」で議論した"繋がりの価値"について、ご紹介します。
なお、本記事は、令和3年度富田林市自主研究グループ『ConnecTon』報告書の第1章と第2章に少し加筆したものです。
報告書原本は、本記事の最後をご覧ください。
富田林市自主研究グループ「ConnecTon」とは?
まずは、富田林市自主研究グループ「ConnecTon」の概要について、ご紹介します。
私が自主研を立ち上げた理由や想いをまとめておきます。
富田林市自主研究グループ「ConnecTon」が立ち上がった経緯!
まずは、富田林市自主研究グループ「ConnecTon」が立ち上がった経緯です。
富田林市自主研究グループ『ConnecTon』は、部局を超えた庁内職員同士の繋がりだけでなく、全国各地の国家公務員・地方公務員、民間企業、地域団体、市民などの数多くの繋がりを持つ、または、繋がりを作りたい有志職員6人で構成されています。
これらの庁内外問わない繋がりづくりを経て「感じているメリットや価値を可視化し、多くの人に体感してもらいたい」という想いから、本研究グループは始動しました。
そして、富田林市職員の「視野を広げるきっかけ」と「庁内コミュニケーションの活性化」を主な目的に、富田林市自主研究グループ制度(人事課)を活用しています。
グループ名の由来は、以下の通りです。
「Connect」 + 「Tondabayashi」 = ConnecTon(こねくとん)
Vision・Mission・Value
次は、富田林市自主研究グループ「ConnecTon」のVision・Mission・Valueです。
「Vision・Mission・Value」(VMV)とは、主に民間企業における経営理念の中に含まれるようなものであり、様々な定義があります。
一般的には、以下のように定義され活用されています。
- Vision:なりたい姿、目標
- Mission:実現したいこと、果たしたい使命、役割
- Value:チームとしてあるべき姿、体現すべき価値観
自治体では聞きなれない言葉ですが、近年では人材育成の分野で示されるケースも増えてきており、全国的な事例としては、奈良県三宅町の「Vision・Mission・Value」が注目を集めています。
本自主研でも同様に、以下のような「Vision・Mission・Value」の設定を行ってみました。
- Vision:庁内職員のコミュニケーション活性化、庁外へ飛び出す職員の増加
- Mission:繋がりの価値の言語化・可視化、体験の場づくり
- Value:庁内職員・他自治体職員・市民・異業種との繋がり
なぜ自治体職員に「繋がり」が必要なのか?
本研究グループでは、「繋がり」をテーマに、2021年7月から9月で計5回のミーティング、そして、豊中市自主研究グループ「とよらぼ」との意見交換会を行いました。
ここでは、私たちが議論してきた内容について、まとめてご報告させていただきます。
なぜ自治体職員に『繋がり』が必要なのか?
まずは「そもそも、なぜ自治体職員に『繋がり』が必要なのか?」です。
このテーマに対して様々な意見が飛び出しましたが、主に以下のような内容の意見が集まりました。
- 日常業務における悩みや課題を解決するため!
- 地域課題や社会課題を解決するため!
- 良質な知識や情報を効率よく得るため!
- 社会人としての視野を広げるため!
人間特有のスキルが必要な時代に!
また、様々なインターネット記事や著書において、これからの未来は自治体職員も終身雇用が保障される時代ではなくなると言われています。
このような時代が到来する中で、社会人として生き残るためのスキルとして「人間特有のスキル」が、今とても注目を集めています。
その中の最重要キーワードの一つに、「人間関係構築(=繋がり)」があるのです。
(参考)「人間特有のスキル」として注目を集めるビジネスキーワード(抜粋)
副業・複業、IT知識、創造力、企画力、情報発信・収集力、思考力、感性、課題発見・解決力、主体性、対人能力
一人じゃ何もできないから!
本研究グループで議論を重ねた結果、「なぜ自治体職員に「繋がり」が必要なのか?」という問いに対して、一言で「一人じゃ何もできないから」という理由が一番本質的な答えだと、私たちはまとめました。
その理由は、私たち自治体職員は一人で何も成し遂げることができないからこそ「繋がり」が働くうえで必要最低限のスキルであること、そして、そもそも住民目線の醸成にも「繋がり」の力は欠かせないと考えたためです。
また、一人の自治体職員である前に、一人の地域住民でもあります。
地域住民として生きていくために必要なことも「繋がり」です。
これらのことから、私たち自治体職員は、様々な視点を持つ人との「繋がり」が重要だと私たちは考えました。
自治体職員の「繋がり」の価値とは?
では、自治体職員の「繋がり」にはどのような価値があるのでしょうか?
様々な課題がある中で「そもそも自治体職員の繋がりの価値にどのようなものがあるのか?」について、先ほどの意見をベースに深掘りしてみました。
日常業務における悩みや地域課題・社会課題を解決するため!
- プライベートで話が盛り上がるからこそ、点や線となって形になる。
- アイデアが豊富になり、自分の自信にも繋がる。
- 助け合える仲間ができる。
- 業務に幅が出せるようになる。
- 過去の繋がりが、将来の目的達成にも繋がることがある。
- 繋がることで解決できる社会課題も多い。
- 地域を楽しむ職員が増える。
- 自治体の認知獲得に繋がる。
良質な知識や情報を効率よく得るため!
- 有益な情報を多角的に得ることができる。
- 自分にとってプラスになる人との繋がりができる。
- スムーズに話を聞きやすくなる。
社会人としての視野を広げるため!
- 業務に幅が出せるようになる。
- 知識が増える。
- 想いを持つ人との繋がりから刺激を得る。
- 思考を深めるきっかけになる。
- メンタル面が楽になる。
- 「自分だけではない」という気付きを得ることができる。
- 将来のための財産となる。
- 個人としてキャリアを考えるきっかけになる。
- 人間として大きく成長できる。
繋がりから住民サービスへ!
これらの内容からもわかる通り、「繋がり」を通じて、知識の醸成や課題解決ができるだけではなく、一人の自治体職員としての成長にも大きく一歩を踏み出します。
そして、地方公務員として成長することで、自治体への貢献にも繋がります。
その結果、最終的に行政サービスが良くなることによる市民満足度の向上へ寄与するのです。
自治体職員の「繋がり」における課題とは?
自治体職員の現場において、「繋がり」はまだまだ多くの課題があります。
ここでは、「繋がり」においてどのような課題があるのかの整理を行いました。
「繋がりは必要ない」という思い込み!
- 繋がりを重要に思っている自治体職員がまだまだ少ない。
- 仕事をする上でのメリットや得られるものが知られていない。
- 想いを持って働いている人ばかりではない。
- 現状の繋がりで満足している。
「繋がりづくり=意識高い系」という誤解!
- 参加したいけれど、周りの目を気にして参加しにくい環境。
- 繋がりづくりは、ハードルが高いという誤解。
「繋がり」は自動的に生まれるものという間違った認識!
- 「自分から意識的に繋がらないといけない」という概念がない。
- 「人との出会い」だけでは、本当の「繋がり」とは言えない。
- 定期的な人事異動や経験年数で「繋がり」が増えると思っている。
機会や環境における課題!
- デジタル化により「雑談」の機会が失われている現状。
- 「環境がないとコミュニケーションをとることはできないのか?」という疑問。
- オンラインツールを有効に使いこなせていない。
- コロナ禍だからこその出会いが生まれることを知らない。
- コロナ禍だからこそ「繋がり」が大切だという自覚がない。
これらのように、「『繋がり』に対しての思い込みを持った人が多いのではないか?」ということが、一つの大きな課題となっています。
特に、①「繋がりは必要ない」という思い込みや②「繋がりづくり=意識高い系」という誤解は、実際に行動を起こそうという意識を持った人の大きな障壁となっている現状があります。
飲みニケーションは不要派に!
また、コロナ禍を言い訳にしていることも近年の大きな特徴で、お酒の席での交流(いわゆる「飲みニケーション」)ができないことが要因だと言う人は多いです。
しかし、FNNの取材によると、「飲みニケーション」の不要派が6割を超えている現状です。
特に、20代や30代では数値が更に高く、若い世代ほど「飲みニケーション」に頼らない繋がりづくりが重要だと言われています。
お酒に頼った繋がりづくりも、見直さなければならない局面にシフトしていることを理解しなければならないと言えるでしょう。
「繋がりづくり」を進めるために意識しておきたいこととは?
次は、「繋がりづくり」を進めるために意識しておきたいことです。
「繋がりづくり」は非常に多岐にわたるため一概に言えるものではありませんが、本研究グループで列挙してみました。
行動を起こす際のヒントとして、ぜひご参考にしてください。
「繋がりづくり」を進めるために意識しておきたいこと!
- 何がなんでも全員と繋がる必要はない。
- 結局は、「人」が全て。どこまでいっても、「人」と「人」という認識。
- 繋がりは、「信頼関係」である。
- 役所だけに必要なスキルでなく、社会人として必要なスキルという意識。
- 「誰と仕事をするのか?」や「周りが助けてくれるかどうか?」という視点。
- 最初は「メリット」がきっかけで良い。
- 「繋がりの価値」をどのように見せていくかが大切。
- 頼まれごとは、試されごと。信頼している人にしか頼まれない。
- まずは「自分が楽しむこと」が大切で、その「楽しさ」を見せていくことも重要。
- 「人と繋がりたくない。繋がる必要がない。」という視点を否定しない。
- オンラインは、「出会いの前倒し」である。
- 「繋がり」について、学生は「与えられる」もの、社会人は「自分で探す」もの。
- 「繋がり」も様々なステージに分けられる。(①庁内職員、②他自治体職員、③民間企業等異業種、④地域団体、⑤市民など)
- 「繋がり」の押し売りになってはいけない。
「繋がり」を実践するうえで大切なこと!
- 「メリット(価値)」と「リスク(危機感)」の2つの視点から考える。
- 「公務員」という看板があることで、第一印象が悪くなることはそうそうない。
- 「若さ」は武器になる。
- 謙虚な姿勢は認められる。
- 「話を聞くこと(傾聴)」を心がける。
- わからないことは、正直に聞く。
- 「この人は、わかろうとしてくれている」という真剣さを出す。
- 人によっては「テーマ」や「形」は様々である。
富田林市職員が「繋がり」により変化する未来とは?
最後に、「富田林市職員が「繋がり」により変化する未来」として、Visionの先にある未来を想像してみました。
本研究グループでも様々な意見が出ましたが、主に、以下の内容があげられました。
- 庁内での助け合いにより仕事が効率的になる。
- 部局間連携の取り組みが増える。
- 地域課題の解決策が見つかる。
- 地域や仕事を楽しむ職員が増える。
- 全国各地の人が職員個人をきっかけに富田林市を知ることが増える。
- 職員や自治体に良いイメージを持ってもらうきっかけになる。
「繋がり」を通じて、これらのような未来が富田林市職員にも期待できます。
特に、地域や仕事を楽しむ職員が増えることで、職員全体の質、そして、自治体としての質の向上まで見込むことができるでしょう。
更に、職員と自治体の質の向上による影響は、市民サービスの向上にも直接繋がります。
そのため、「繋がり」を軽視せず、今一度「繋がり」と向き合ってみることも良いかもしれません。
まとめ
今回は、地方公務員の繋がりの価値を考え行動するためのチームである富田林市自主研究グループ「ConnecTon」で議論した"繋がりの価値"について、ご紹介しました。
繋がりの場づくりとして実践したことや職員への提案については、以下の報告書をご覧ください。
富田林市自主研究グループ「ConnecTon」は、令和4年度以降も継続します。
令和4年度は、様々な市民や団体、民間企業の方々と富田林市職員の繋がりの場作りが出来ればと考えています。
富田林市職員に様々な繋がりの機会を提供して多様な視野と価値観を持てる職員を増やし、市民サービスを少しでも向上するきっかけになれば嬉しく思います。
引き続き、応援をよろしくお願いします。