地方自治体の観光担当と言えば、みなさんはどのような仕事を想像しますか?
令和4年4月、私は富田林市の観光振興担当に着任しました。
しかし、観光の本質をあまり理解していなかったため、様々な読書やオンラインセミナーへの参加を通じて、「観光」がどのようなものかを考え直すところから始めてみました。
本記事では、私がインプットしてきた「観光」に関する内容を、私なりの考えでまとめてみました。
では、そもそも「観光」とは、どのようなものなのでしょうか?
今回は、「観光」の考え方と新任の観光担当者が考える地方自治体の観光担当が担うべき役割について、ご紹介します。
「観光」という言葉の意味を考える!
「観光」は当たり前のように使っている言葉ですが、みなさんはどのような定義・意味か知っていますか?
まずは、「観光」という言葉の定義・意味を紐解いてみます。
観光の定義を知る!
まずは、観光の定義を知ることです。
日本における観光の定義としては、観光政策審議会が1995年に以下のように定義付けをしています。
また参考に、コトバンクで調べた「観光」の定義も共有しておきます。
観光の定義を「余暇時間の中で、日常生活圏を離れて行う様々な活動であって、触れ合い、学び、遊ぶということを目的とするもの」と考える。
(引用:観光政策審議会 答申第39号、1995年6月2日)
一般的には「日常の生活では見ることのできない風景や風俗、習慣などを見て回る旅行」を意味したが、旅行の安全性や快適性が進むにつれて、遊覧や保養のための旅行など「楽しみのための旅」全般をさすことばとして広く使用されるようになった。
(引用:コトバンク)
「観光」という言葉を分解する!
次は、「観光」という言葉を分解することです。
「観光」という言葉を単純に分解すると、「観」と「光」に分けることができます。
「観」は「観る」であり、「見る」ではありません。
- 観る(Watch):意図的に目を向けること
- 見る(See):意図せずに目に入ること
「観る」と「見る」の違いから考えると、「観光」は受動的な行動ではなく、能動的な行動であることがわかります。
そのため、「観光」に対して、どのような意思や目的があるのかを捉えることが大切だと言えるでしょう。
「観光」を意味する2つの英単語!
最後は、「観光」を意味する2つの英単語です。
「観光」を英語で表現すると、「sightseeing」と「tourism」の2つがあります。
「sightseeing」は、「sight(眺め)」と「seeing(見ること)」を合わせた単語であることから、観光地を見て回る行動自体を表すものでしょう。
対して「tourism」はツアーなどの旅行を示すことから、産業としての観光や旅行を表すものでしょう。
その他、混在する英単語としては以下のようなものがありますので、参考にご覧ください。
- travel:旅
- trip:旅行
- tour:周遊
- journey:長旅
観光は「手段」の一つだと理解する!
では、観光とは、どのようなものなのでしょうか?
ここでは、観光の「手段」と「目的」について、整理してみます。
観光は「目的」ではなく「手段」!
まずは、観光は「目的」ではなく「手段」ということです。
先ほど「観光」という言葉は、能動的な行動であることがわかりました。
そして、行動そのものは、ひとつの「手段」です。
そのため、観光は手段の一つだと言えるでしょう。
観光にも様々な形がある!
次は、観光にも様々な形があることです。
観光はを一言でまとめることは、非常に難しいです。
例えば、個人・団体や国内・国外など、様々な場合分けが考えられるためです。
また、近年では、「◯◯ツーリズム」という言葉が多く生まれています。
このように、一言で「観光」と括ること自体が難しいことも理解しておきましょう。
- アグリツーリズム
- スポーツツーリズム
- ヘルスツーリズム
- メディカルツーリズム
- エコツーリズム
- グリーンツーリズム
- ロケツーリズム
- サステナブルツーリズム など
観光担当者の仕事の「目的」は何か?
最後は、観光担当者の仕事の「目的」です。
私が考える観光担当者の仕事の一番の目的は、持続可能な地域にすることです。
観光という「手段」を活用して地域でお金を循環させ、持続可能な地域にするというものです。
近年、観光まちづくりという言葉も生まれています。
このような持続可能という観点から生まれているものでしょう。
地方自治体の観光担当は、どのような役割を担うべきか?
最後に、地方自治体の観光担当は、どのような役割を担うべきか考えてみました。
自治体によって観光の事情も異なるとは思いますが、考えるきっかけの一つとしてください。
観光担当の仕事は、情報発信やイベント企画だけではない!
まずは、観光担当の仕事は、情報発信やイベント企画だけではないことです。
「観光担当になりました」と言えば、観光情報の発信やイベント企画だと思われがちです。
私も観光担当になった際に、実際に「観光PR頑張って!」というお声がけがほとんどでした。
しかし、情報発信やイベント企画は、観光担当の仕事の一部でしかありません。
地域における観光への機運醸成や受け入れ体制整備支援、そして、情報発信支援が、主な行政の役割ではないかと私は考えています。
観光地域づくりの中心プレイヤーは、住民と民間事業者!
次は、観光地域づくりの中心プレイヤーは、住民と民間事業者ということです。
観光地域づくりにおいて、地方自治体が中心になってはいけないと、私は考えています。
その理由は、地方自治体が中心になると、予算がなくなれば終わってしまうためです。
近年においては、地域の観光施策における官民連携や住民参加も各地で取り組まれています。
地域に関わる住民と民間事業者が中心で観光に対して取り組むことが、持続可能な観光地域づくりとなるでしょう。
もちろん、最初のきっかけづくりとして地方自治体が中心になっても良いとは思いますが、最初から住民と民間事業者を巻き込む設計をしてみましょう。
コミュニケーション力とコーディネート力が重要なスキル!
最後は、コミュニケーション力とコーディネート力が重要なスキルということです。
先ほどご紹介したとおり、観光地域づくりの中心プレイヤーは、住民と民間事業者です。
そのため、地方自治体の観光担当は、いかにプレイヤーとの対話を繰り返し、調整役に徹することができるかが重要となります。
そのためには、観光地域のことを現場レベルできちんと知らないといけません。
まずは、机上で観光を語るのではなく、現場で語ることを意識してみてはいかがでしょうか?
また、観光の仕事は、観光部門だけでは成立しないことがほとんどです。
例えば、道路交通部門や建築部門、農業部門、文化部門など、いずれも日頃からの連携が欠かせません。
庁内でのコミュニケーションにも意識的に取り組んでみてください。
まとめ
今回は、「観光」の考え方と新任の観光担当者が考える地方自治体の観光担当が担うべき役割について、ご紹介しました。
観光担当は一見華やかな仕事だと思われますが、実はとても調整能力が必要な仕事です。
私は観光担当になったばかりではありますが、まずは「観光」という言葉の本質や地方自治体が担うべき役割を考えて、そこで自分がどのように動くべきかを今後も考えていきたいと思います。
また、今では無料のオンラインイベントで観光がテーマのイベントは多くあります。
本記事もそのいくつかのイベント内容を抜粋して整理したものですが、様々な考え方があるので、とても楽しいです。
新しく観光担当に着任されたみなさま、共に頑張りましょう。