令和4年6月14日、地方公務員オンラインサロンにて、株式会社メルカリの橋本佳苗さんによるオンラインセミナー『人事のプロがみるメルカリの人材育成とは』が開催されました。
地方公務員限定のオンラインサロン「地方公務員オンラインサロン」では、月に3〜5回ほどのペースで、様々なジャンルでご活躍されている方のオンラインセミナーが開催されています。
今回開催された株式会社メルカリの橋本佳苗さんによるオンラインセミナーでは、地方自治体以外の人事に関する考え方や取り組みなどを知ることができました。
では、どのような内容をお話だったのでしょうか?
今回は、地方公務員オンラインサロンのセミナーレポート『人事のプロがみるメルカリの人材育成とは』について、ご紹介します。
奈良県生駒市の元人事制度担当官!
橋本 佳苗(はしもと かなえ)
株式会社メルカリ People & Culture, Learning Development Team マネージャー。大阪大学大学院修士課程修了。P&G人事部にて、給与・採用アソシエイトマネージャー、トレーニングマネージャーおよびHRBPを経て、独立。大手企業を中心に人材育成と組織構築のコンサルティングおよび新人から経営層まで幅広く研修とコーチングを提供。近年は、パラレルキャリアを実践し、世界的なラグジュアリーブランドでの人材育成チームのディレクターや人事ヘッド、奈良県生駒市役所にて人事改革担当官を歴任。現在はメルカリグループ全体の育成プログラムの設計・運用・登壇や、事業部毎の人材育成に携わっている。
地方公務員のみなさんは、地方自治体以外の人事施策や人材育成がどのようなものかご存知でしょうか?
地方自治法や地方公務員法、各自治体の条例などに基づく人事制度以外を知る機会は、なかなかないものだと思います。
今回の地方公務員オンラインサロンは、奈良県生駒市のプロ人材公募で人事制度担当官として約2年間携わり、現在は、株式会社メルカリの人材育成に関するマネージャーを務める橋本さんによる講義でした。
普段の地方自治体の仕事では得ることが出来ない視点や考え方などのお話は、とても価値のある内容ばかりでした。
<セミナーの流れ>
・メルカリの現在地
・人事施策の全体像と人材育成施策
橋本さんは、学生の頃から人事の仕事に興味を持っており、就職活動も人事分野を中心に行っていました。
その結果、最初はP&G人事部に勤められていたそうです。
その後、独立して会社を設立し、また、パラレルワークとして様々な組織に関わりながら人事の仕事をしています。
その一つが、奈良県生駒市でした。
そして、現在は株式会社メルカリの人事部に務めています。
人事の仕事を組織の中からも外からも経験している橋本さんのお話は、とても説得力と学びが多い1時間でした。
地方公務員の人事制度を考える良いきっかけにもなりました。
株式会社メルカリを知る!
まずは、株式会社メルカリのお話です。
株式会社メルカリは、創業者である山田進太郎さんが『限りある資源を循環させ、より豊かな社会をつくりたい』という問題意識によって生まれました。
コーポレートミッションは「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」であり、2000人を超える従業員数の急成長中の企業です。
個人利用が中心のフリマアプリ「メルカリ」だけでなく、店舗利用の「メルカリShops」や決済サービス「メルペイ」など、幅広く事業を展開しています。
また、株式会社メルカリは、組織の多様性を大切にしており、40カ国以上から社員が集まっています。
2021年9月には、組織として柔軟な働き方を推進する「YOUR CHOICE」という制度もリリースしました。
「YOUR CHOICE」は、日本国内であればどこからでも働いて良い、また、勤務時間もフルフレックスの制度です。
自分で仕事のマネジメントをして成果を出すことができれば良いというものです。
橋本さんも、チームメンバーのほとんどが関東圏という中で、大阪から仕事をしているそうです。
個人と組織のパフォーマンスを最大限に発揮してもらうことが狙いであり、家を持たずにノマドワーカーをしている人もいるとのことでした。
その他、株式会社メルカリにおいてバリューを大切にしていることや誰にでも理解できる会社の価値観のこと、ルールを必要以上に設けないこと、そして、採用から退職までの各フェーズで目的・ポリシーを明文化していることのお話は、地方自治体においても参考になる内容ばかりでした。
民間企業のことを知る・学ぶことは、今後の自治体人事においても必要不可欠ではないかと、私は強く感じました。
人事施策の全体像と人材育成施策!
次は、人事施策の全体像と人材育成施策についてのお話です。
人材育成といえば、「どんな研修をしているのか?」と考える人は多いと思います。
しかし、人材育成における考え方としては、人事部の様々な施策が有機的に結びついていることが大切とのお話でした。
また、株式会社メルカリにおける人事部のビジョンは、「メルカリグループの事業成長のために組織・人材のWIN-WINを最大化する」です。
その実現のために、以下の3つの柱を立てています。
- Attract:事業成長に必要な多様な人材の獲得
- Develop:個人とチームの成長の最大化
- Engage:新しい働き方の実装
株式会社メルカリの人事部としては、「人材の成長を最大化させたい」という想いで人材育成や人材開発を行なっています。
そして、国際的な躍進を支える組織(日本発でグローバル化していきたい)・新しい社会像を体現する組織(世の中のロールモデルとなるような存在でありたい)へ進むことを目指しているそうです。
これらの実現のために、株式会社メルカリでは、まずは、マネージャー層のバリュー行動とスキル向上を行なっています。
また、マネージャーとメンバーで上手に歯車が合うことも大切なので、メンバーの基礎力向上も同時に取り組んでいます。
「個人と組織のWIN-WINを最大化するという面では、キャリアを株式会社メルカリで叶えてもらいたい」という橋本さんのお話に、とても心が惹かれるものがありました。
個人と組織のことを熱く想う人が人事部局にいるだけでも、「地方自治体の人事は変わっていくのではないか?」と感じた内容でした。
「誰がどのようなことをやっているのか?」の見える化!
最後に、参加者からの質問に対して、橋本さんからお答えいただく時間がありました。
人材育成のアップデートやKPI設定、研修や資料のシェアなど、様々な質疑やディスカッションがあった時間でした。
その中でも、以下の質問が私にとって、とても響くものが大きかったです。
『自治体の人事に対して、「このような視点・観点を持ったら良い」というものはありますか?』
この質問に対して、橋本さんは『全体像がもっと見えると、いろいろな人の知恵や経験が、もっと様々な場に活きるのではないかと思う。「誰がどのようなことをやっているのか?」を見える化し共有されたら良いなと思う。』とのお話でした。
今の地方自治体の人事が抱える課題に対する的確な指摘に、セミナー参加者の多くが頷いたのではないでしょうか?
そして、株式会社メルカリの人事部は、「日本・世界における先進の人事事例を仕掛け、社会へポジティブなインパクトを与える」ことを掲げています。
その実現のために、橋本さんが属するLearning & Developmentチームのミッションは、「メルカリのバリューに基づいたラーニングカルチャーを醸成し、ビジネスを前進させるとともに一人ひとりの成長を最大化する。」とのことです。
本記事では割愛した内容も多々ありますが、地方自治体においても、ミッションやバリューを明確かつ透明にして、チームメンバーで共通の認識を持つ必要があるのではないでしょうか?
多くの地方公務員の心に残るであろう、とても貴重なセミナーでした。
まとめ
今回は、地方公務員オンラインサロンのセミナーレポート『人事のプロがみるメルカリの人材育成とは』について、ご紹介しました。
今回の橋本さんのオンラインセミナーでは、株式会社メルカリのこと、そして、取り組まれている人事施策や考え方のお話を聞かせていただきました。
普段、地方自治体で働いているだけでは絶対に聞くことが内容であったため、視野を広げるためにも多くの方に聞いてもらいたいセミナーでした。
また、株式会社メルカリは、インターネット上に「無意識バイアスワークショップ」に関する研修資料を無償で公開しています。ご参考にご覧ください。
▼今後開催予定のオンラインセミナー
【7月4日(月) 21:00〜22:30】
講演-大谷 基道さん(獨協大学法学部 総合政策学科教授)
「地方公務員の定年引き上げ、どう向き合うべきか」【7月7日(木)21:00〜23:00】
講演-三谷繭子さん(株式会社Groove Designs)【NECソリューションイノベータ合同勉強会】
「心地よい体験と空間づくりで、まちの愛着を生み出す「プレイスメイキング」とは?」【7月21日(木)21:00〜22:30】
講演-寺本 英仁さん(Local Governance代表)
「役場を辞めた理由」と「退職後の生き方」【7月26日(火)21:00〜22:30】
講演-久保田 崇さん(掛川市長)
「組織の敵は人間関係!自分を守り目的を実現するために必要な処世術とは」
地方公務員オンラインサロンでは、月に3〜5回のペースで、魅力的なオンラインセミナーが開催されています。
オンラインセミナーを通じて、公務員同士の交流や民間企業の方との交流・学びもあるので、リアルタイムでオンラインセミナーへの参加をおすすめします。
また、地方公務員オンラインサロンでは、約200本の過去のオンラインセミナーをアーカイブ視聴することもできます。
地方公務員オンラインサロンの参加者は、ぜひ一度、ご覧ください。