みなさんの自治体では、首長や企画部署に対して事業提案を行う機会がありますか?
富田林市では、令和4年1月に庁内職員に対して事業提案の募集がありました。
そこで私は「民間複業人材の活用」を提案し、結果として、約半年ほどで実装されることになったのです。
事業提案内容が評価されたことを嬉しく思うと同時に、多くの方から「どのような提案をどのように提出したのか?」ともお声がけもいただきました。
本記事では、その方法論と流れを整理させていただきました。
では、どのような流れで実現したのでしょうか?
今回は、職員提案制度を活用して、民間複業人材の活用に関する提案を実現させるまでの私の動きについて、ご紹介します。
なぜ民間複業人材活用の職員提案を行ったのか?
そもそも、私はなぜ民間複業人材活用の職員提案を行ったのでしょうか?
ここでは、職員提案を行なった動機と想いをご紹介します。
各部署の課題解決や市民サービスの向上に繋げてほしいため!
まずは、各部署の課題解決や市民サービスの向上に繋げてほしいためです。
庁内の各部署において、様々な課題解決や市民サービスの更なる向上に向けた取り組みが進められています。
しかし、地方公務員だけの視点では、解決できる課題や市民サービスの向上には限界があるでしょう。
そのため、各分野におけるプロの民間人材の力を借りて、少しでも各部署の改題解決や市民サービスの向上に繋げてほしいと考えました。
その分野のプロを巻き込み、そして、外からの新しい視点を入れることで、富田林市の何かが変わることを願っていたのです。
職員自身の視野を広げるきっかけにしてほしいため!
次は、職員自身の視野を広げるきっかけにしてほしいためです。
富田林市は、様々な分野において公民連携を進めており、民間企業との協働を実践しています。
しかし、具体的な実務を進めるときには、まだまだ地方公務員の視野から抜け出せていないように強く感じていました。
そのため、本市職員が普段の業務の中で民間企業の人たちと関わる機会を生み出し、視野を広げるきっかけになってほしいと考えました。
地方公務員以外の視野や価値観に触れ、まだまだ職員自身が成長できる可能性を感じてもらえたら嬉しく思います。
職員提案を行う前に、私が実際に行った行動とは?
「職員提案をしよう!」と言ったとしても、具体的で実現性のある職員提案を行うことは容易ではありません。
ここでは、職員提案を行う前に私が実際に行った行動について、参考までにご紹介します。
民間複業人材活用を実践している先進自治体へ聞いた!
まずは、民間複業人材活用を実践している先進自治体へ聞いたことです。
地方公務員が職員提案を行う際に、とても高い効果を発揮するものが他自治体の事例です。
今回は、奈良県三宅町の知り合いの方をはじめ、様々な方と情報交換をすることができました。
ここで、私は今までの活動における人脈が非常に活きたと実感しました。
とても気軽に深い内容まで聞けただけでなく、力強く背中も押してもらうことができました。
お世話になったみなさま、誠にありがとうございました。
「何のために、誰のために」の問いを繰り返した!
次は、「何のために、誰のために」の問いを繰り返したことです。
職員提案は、自己実現や自己満足を満たすための場ではありません。
「何のために、誰のために」を常に意識し、その先に「誰の笑顔があるか」の本質的な問いを繰り返すことが大切だと、私は考えています。
また、私は、たった一度の問いで決め打ちをするのではなく、自分の意見を何度も客観的に問い直すようにしています。
このようにすることで、より内容が充実した良い提案を出来るようになるのでしょう。
そのため、今回の職員提案だけではなく、私は日頃から「何のために、誰のために」の問いを大切にするようにしています。
職員提案制度を活用して提出した実際の私の提案内容を紹介!
では、私が職員提案制度を活用して提出した、実際の私の提案内容をご紹介します。
新規事業の提案を行う際に、何かしらの参考になれば幸いです。
なお、実際の運用においては、事業内容及びスケジュールが異なっております。
●事業名
持続可能な自治体経営を目指す「自治体×複業」実証実験プロジェクト
●事業目的
これからのWithコロナ/Afterコロナ時代において持続可能な自治体となるためには、民間企業等のスペシャリストの力が欠かせない時代になると想定しています。その中で、「複業 for Public」を掲げて複業クラウドサービスを運用する株式会社Another worksと連携し、民間プロ人材の登用による各部署の課題解決や業務の効率・効果の向上、また、次年度の予算要望や事業の方向性などに対する意見提案やアドバイスなどを受けることを、主な目的とするものです。また、Withコロナ/Afterコロナ時代における民間企業の動きや視点を行政の場で活かしてもらうことにより、広い目で見ると、市民サービス向上などの市民に対する効果も期待することができます。
●事業対象者
庁内内部
●事業内容
複業促進の分野において、日本で最も多くの自治体と取り組みをしている株式会社Another worksと連携し、①DX推進、②人事、③マーケティング、④まちづくりの4分野などで、外部プロ人材のプロボノ任用を行うもの(府内市町村であれば、東大阪市、太子町、岬町などが類似事業を実践)。業務従事については、週1を想定。
●事業全体イメージ
4月:連携協定締結・人材公募開始、5月:内定、6月から11月:業務従事、12月:最終報告会
●想定経費
0円(プロボノ人材の任用であるため)
●事業効果
・民間企業のスペシャリストを任用することにより、各部署の課題解決や効率・効果の向上へ寄与
・庁内職員の視野を広げるためのきっかけづくりとスキル向上
●成果目標(KPI)
各担当部署で設定している主要施策のKPI達成
●庁内実施体制
人事課(最終的には、政策推進課主体で実施されました)
●外部連携体制
株式会社Another works
●事業周知方法
広報誌掲載、プレスリリース等
●その他
株式会社Another worksは多くの自治体での実績があり、各分野におけるスペシャリスト人材が集まる複業サービスでも認知されています。また、広報力も非常に高いため、富田林市で働くことに対するPRにも繋がるかもしれません。単年度の取り組みであったとしても、このコロナ禍だからこそ、スペシャリスト人材の任用に挑戦しても良いのではないかと考え、同提案とさせていただきます。
職員提案の募集から業務開始まで!
最後に、職員提案の募集から業務開始までの流れについて、ご紹介します。
事業提案から業務が始まるまでのスケジュール感について、一つの参考事例としてご覧ください。
職員提案の実施!
まずは、1月上旬に、庁内のイントラネットにて職員提案の募集がありました。
部署単位ではなく個人単位での自由な事業提案が可能であったため、今回私は個人での事業提案を行いました。
そして、2月中旬頃に、企画担当部署から職員提案一覧と評価が内部で公開されました。
全部で10以上の事業が提案され、その中でも実施優先順位が高い事業として良い評価をいただきました。
複業人材の活用に向けた庁内調整!
3月には、知人を介して株式会社Another worksさんと企画担当部署を繋ぐ場を設けました。
企画担当部署が関係者から直接お話を聞く機会を設けることで、より具体的な実施のイメージを持ってもらうことに繋がりました。
4月中旬頃、企画担当部署から庁内全部署に対して、民間複業人材活用に向けた公募が始まりました。
その結果、今回は3つの部署が手を上げる形になりました。
複業人材の募集に向けた最終調整!
5月下旬、3つの部署と株式会社Another works担当者によるミーティングが行われました。
民間複業人材募集に関する背景や課題、想いなどの具体的な内容整理です。
株式会社Another worksの担当者が丁寧に想いを引き出してくれたので、とても話しやすかったです。
6月中旬には、ウェブサイト掲載やプレスリリース公開に向けた準備がありました。
主に、企画担当部署と株式会社Another worksの担当者が頑張って進めてくれたものです。
とても短い期間での準備であったとは思いますが、進めてくれた方々には感謝の言葉しかありません。
協定締結と複業人材募集開始!
6月23日に、富田林市と株式会社Another worksは協定を締結し、民間複業人材の募集が開始となりました。
以下の3職種について、7月8日まで募集されたものです。
私が担当している「観光客増加のマーケティングアドバイザー」は、最終的に約20名のエントリーがありました。
- ふるさと納税アドバイザー
- 観光客増加のマーケティングアドバイザー
- 健康分野の広報アドバイザー
7月下旬、公募いただいた方で書類選考を通過した4名とWEB面談を行いました。
みなさん本当に熱い想いを持っており、私としては「みなさんと仕事がしたい!」という気持ちになりました。
また、みなさんのお話する内容から学ぶことも多く、とても有意義なWEB面談でした。
そして、8月10日から民間複業人材の業務が開始となりました。
具体的な業務内容や成果については、半年後に報告会を行う予定となっています。
ここからが本番として頑張りますので、みなさん是非ご注目をお願いします。
まとめ
今回は、職員提案制度を活用して、民間複業人材の活用に関する提案を実現させるまでの私の動きについて、ご紹介しました。
まず、職員提案に評価いただき、実装までの庁内外の調整を行ってくださった企画担当部署のみなさま、そして、株式会社Another worksのみなさまには、心より御礼申し上げます。
富田林市が今後少しでも変わっていくきっかけや具体的なアクションに繋がることを、強く願っています。
そして、本記事による事例紹介が、少しでもみなさんのお役に立てることを願っています。
私流の新規事業提案ではありましたが、誰かの参考になれば嬉しく思います。