2022年10月14日に、彩流社から『市民は行政と協働を創れるか』が出版されました。
本書は、「市民は行政と協働を創りだせるのか?」の問いを軸に、千葉県流山市・奈良県生駒市・栃木県那須塩原市の3つの地域の物語が、市民と行政職員のそれぞれの視点で語られた1冊です。
協働に関する様々なヒントや手法を知ることが出来るだけでなく、物語の主人公たちの様々な感情や熱量、信頼関係の構築を感じることができる本書からは、誰もが良い刺激を受けることができるでしょう。
私も市民と協働を進める一人の地方公務員として、自分ごとのように読み進めることが出来ました。
では、本書にはどのようなことが書かれているのでしょうか?
今回は、『市民は行政と協働を創れるか』の感想について、ご紹介します。
本書の概要と感想!
『市民は行政と協働を創れるか』(編著:河井 孝仁)
2022年10月14日発売
河井 孝仁(かわい たかよし)
東海大学文化社会学部広報メディア学科教授。博士(情報科学・名古屋大学)。静岡県職員を経る。専門は、行政広報論、シティプロモーション、地域情報論。公共コミュニケーション学会会長理事、日本広報学会常任理事などを務める。著書に『シティプロモーションでまちを変える』(2016年)、『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』
(共編著、2017年)、等がある。
本書に書いていること!
まずは目次を確認してみましょう。
- 第1章:街は常に変化があり完成形がない―千葉県流山市
- 第2章:刺激を与え合い何回も繰り返す―奈良県生駒市
- 第3章:信じてみたら想定以上の効果があった―栃木県那須塩原市
- 第4章:市民の本音と行政への期待(市民鼎談)
- 第5章:行政職員が地域で生きる(行政職員鼎談)
本書は、「市民は行政と協働を創りだせるのか?」の問いを軸に、千葉県流山市・奈良県生駒市・栃木県那須塩原市の3つの地域の物語が、市民と行政職員のそれぞれの視点で語られた1冊です。
市民3名と行政職員3名の合計6名の物語と河井先生のコメントにより、様々な「協働」がまとめられた内容となっています。
特に、本書の主語となっている「市民」目線のお話や「協働」をロジカルにまとめた河井先生のコメントは、多くの地方公務員にとって良い刺激と気付きを与えてもらえるでしょう。
地域に生きる地方公務員だからこそ、広く読んでもらいたいと感じています。
本書を読んだ私の感想!
本書を読んだ私の感想は、「市民にも広く読んでほしい」でした。
「市民」が本書を読むことで、行政との協働を進めるためのヒントを見つけることができるでしょう。
3つの地域の物語を通じて、行政職員の考え方や感情を知ることにも繋がります。
「協働」は地域により千差万別であり、本書で紹介されている内容が必ずしも読者の地域に当てはまるとは限りません。
しかし、河井先生が「協働」の事例をロジカルに解説しているため、多くの「市民」にとって意味のある1冊となるでしょう。
本書で特に私がみなさんに読んでもらいたい3つの内容!
本書は、「市民は行政と協働を創りだせるのか?」の問いを軸に、千葉県流山市・奈良県生駒市・栃木県那須塩原市の3つの地域の物語が、市民と行政職員のそれぞれの視点で語られた1冊でした。
ここでは、本書で特に私がみなさんに読んでもらいたい3つの内容について、ご紹介します。
地域の課題を解決することはしんどい!
まずは、地域の課題を解決することはしんどいことです。
これは、第1章の白澤さんの物語に書かれている内容です。
白澤さんは市民活動を通じて、多くの「しんどい」を経験されてきました。
本書では、以下の2つを紹介されています。
- 地域の人から批判され、評価されないことが続いた時期があった!
- 「◯◯でなければいけない」というあるべき論になってしまうことで、活動の動機付けがうまくできなくなることがあった!
市民活動を継続させていくことは、決して簡単なことではありません。
その裏で様々なことが起きているということを、本書の本音を交えた物語を通じて、多くの地方公務員に知ってもらえると良いなと思いました。
反省と立て直し!
次は、反省と立て直しです。
これは、第1章の河尻さんの物語に書かれている内容です。
私は行政職員として安全地帯でリスクも取らずに、甘えや至らなさばかりが目立って、恥ずかしさでいっぱいになりました。〜(中略)〜行政職員としては、街でうまれる思いや熱量をこのまま埋もれさせてはおけないと強く思いました。
河尻さんが語るこのひと段落は、とても私の心に深く突き刺さりました。
それと同時に、今の河尻さんの根幹はここにあるのではないかとも感じとれる内容でした。
また、河尻さんの「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」受賞に関するエピソードは、白澤さんとの信頼関係が見える素敵なお話でした。
河尻さんの様々な葛藤や想い、そして、行動が詰まった本内容は、多くの地方公務員にとって良い気付きとヒントになることは間違いないでしょう。
何が起こるか予測できないことにこそ、価値がある!
最後は、何が起こるか予測できないことにこそ、価値があることです。
これは、第2章の大垣さんの物語に書かれている内容です。
大垣さんの心の葛藤とその中で起き続けた変化・気付き、そして、これからの仕事に対する向き合い方がまとめられていました。
そして、本文の締めには、以下の内容を述べていました。
魅力的な出会いが増えていけば、まちに大きなインパクトを与えるはず。まちへのコミットが増えていけば、地域は自走できるはず。
地域は市民が主役であり、私たちは黒子役でコーディネーター的存在になることが望ましいと私は考えています。
より自走した地域を育むためにも、大垣さんたちが実践してきた取り組みは多くの地方公務員の参考になるでしょう。
まとめ
今回は、『市民は行政と協働を創れるか』の感想について、ご紹介しました。
本書は、「市民は行政と協働を創りだせるのか?」の問いを軸に、千葉県流山市・奈良県生駒市・栃木県那須塩原市の3つの地域の物語が、市民と行政職員のそれぞれの視点で語られた1冊でした。
6人の葛藤や想いが赤裸々に語られており、とてもリアルで読み応えのある内容でした。
これからの時代において、「協働」が大きなキーワードになることは間違いありません。
地方公務員として、また、地域に生きる市民として、どのように「協働」と向き合っていくのかを考えるきっかけとして、ぜひ本書を読んでみてください。